上場を追い風に、トヨコ―が更なる飛躍を誓う
更新日:2025/7/28
今年3月28日にトヨコ―(静岡県富士市)が、東京証券取引所グロース市場に上場を果たした。新たなイノベーションの浸透は難しく、会社の信頼度は社歴や年商で計る傾向のある建設業界。旧態依然とした閉塞感を打破するには、「IPOを通じて会社の信用度を上げ、限界突破に挑戦し続けるべき」と上場を計画してから、わずか3年での達成に成功した。日頃から豊澤一晃社長は、「経営者の仕事は、将来起こり得ることを予測し、決断すること」と明言しており、既に次を見据えた展開が始まっている。

トヨコ―は、特殊な樹脂の吹き付け施工をすることで、工場・倉庫にある設備の老朽化を防ぐSOSEI事業と、レーザー施工装置を製造・販売するCoolLaser事業の2つを主軸に組織を運営している。SOSEI工法は、豊澤社長が同社に参画から間もなく取り組み始め、2006年のサービス開始から19年近く黒字を続けてきた実績がある。その一方でCoolLaser事業では、老朽化したインフラのサビ・塗膜を除去するレーザー施工装置「CoolLaser G19-6000シリーズ」の納品開始に至るまで、長年開発に掛けたコストが積み上がり赤字が膨大化。開発が佳境に差し掛かる2022年には瀬戸際の状況まで追い込まれたが、豊澤社長が社内外に迷わず「継続」の指示を出したことで、直後に14億円の資金調達を実現した経緯があるという。外的要因のある土木の現場で、精密光学機器を利用可能にするには万全な体制を整える必要があり、実現までの過程には「それまでの倍近くのエネルギーを要した」と振り返る。「現場におけるお客さまを最優先にした『ものづくり』を!」と開始した双方の事業。長い年月を要したが、2025年3月期より会社全体の黒字化を果たしたことで、豊澤社長は「ようやくスタートラインに立てた」と微笑みながら本音を述べる。


2024年11月には、浜松市内にCoolLaserの新製造・開発拠点となる「HAMAMATSU BASE」の土地・建物を取得した。新工場は、リニューアル工事が終わる今秋にも正式な稼働を予定しており、「新拠点では、今まで月産1台だった製造が、10台程度の増産が可能になる。この機会を更なる躍進に繋げていく」と意気込みを述べる。SOSEI事業は施工リソースが成長のボトルネックとなっているが、豊澤社長は「大部分の施工を協力会社に任せる形を維持しつつ、一部施工の内製化や施工管理の外注化などをコントロールすることで、ボトルネックの解消が図れる」と計画を示す。これまで実施してきた施工の詳細は、データとして社内に蓄積しており、これらをどのように駆使していくかも注目である。
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豊澤社長は、会社を経営する上で最も重視することは「『モノづくり』『ルールづくり』『資金づくり』の3つを、絶妙なバランスを保ちながら動かしていくこと」と断言する。このトライアングルが少しでも崩れぬよう、常に自社・自身を客観的に把握することを心掛けており、この積み重ねこそが「上場を果たせた秘訣」と率直に話す。世界各地では、サビの腐食が原因による社会インフラの崩落・死亡事故が多発する現実があり、今年度はCoolLaser工法が、「NETIS(新技術情報提供システム)」の準推奨技術に選定されるなど、追い風も吹いている。会社のミッションは「キレイに、未来へ」。「人」・「環境」・「現場」に対して優しい事業を展開する、トヨコ―が飛躍する舞台は整った。更なる飛躍が待ち遠しい限りである。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。