海外展開も視野に。TRUST KREWがロープアクセス普及に尽力
更新日:2025/5/2
TRUST KREW(札幌市)は、ロープアクセス工法の普及を進めている。國見幸平社長は、「北海道ではロープアクセスの認知度が低く、業者も非常に限られている。この技術を一般化させ、広く利用されるようにしたい」と力強く語る。

國見社長は高校卒業後、スケートボードへの興味と海外生活に対する憧れからニュージーランドでの生活を経験。20歳で帰国後、アルバイトでロープを用いた窓清掃作業を知り、「ロープで吊るされながら作業する様子や仕事がとにかく格好良かった」と魅了された状況を振り返る。惹き付けられた興味は確信に変わり、北海道内の企業で実務経験を積んだ後、2015年に個人事業主として独立。翌年には法人化を果たし、清掃業を主軸に安定した収益基盤を築くように成長を続けている。


ロープアクセスへの本格的な参入のきっかけは、新型コロナウイルスの影響だった。TRUST KREWは当時、ニセコ地区の宿泊施設を中心に、海外仕様の建築物の清掃を得意としていた。しかし、コロナ禍で観光産業が停滞し、従来業務にあった依頼が激減。新たな事業に対する参入を模索する中、2021年の冬に知人を介する形で、ロープワーカーズコミュニティ(RWC)の代表を務める上田雅人氏と出会うことができた。業界の現状や将来性を議論する中、「北海道の冬期は降雪で閑散期を迎える」と相談。その場で上田氏から関東進出を提案され、即座に快諾する展開の早さに「自分のことながら驚いた」と微笑みを見せる。その後、業務のサポートなどを通して技能を磨き資格も取得。現在では、風力発電の調査や特殊建築物の工事業務など、全国規模のプロジェクトに幅広く携わるようになった。


ロープアクセスの魅力を、國見社長は「圧巻の景色や、通常では到達できない環境で作業できること」と即答する。「アルバイト時代に関わった札幌市内の高層施設の屋上での業務では、大通公園を一望できた状況に魂が震えるほどの感動を覚えた」と原体験を述懐する。確かな経験と感動。飽くなき探求心を保持し続けるには、十分過ぎる動機となっており、更なる原動力を求める貪欲な姿勢は、日を追うごとに強くなっているようだ。

國見社長は「ロープ技術の可能性を模索しつつ、地域社会に対する貢献と自社の成長を両立させたい」と目標を語る。特に北海道は風力発電が盛んな地域であり、助成金制度の活用やGXの流れも追い風となっている。道内に風車を推進できるエリアが多いのは大きなチャンスと考えており、この部門では「海外展開も視野に入れた取り組みも計画している」と胸の内を話す。会社はスケートボード事業にも進出し、練習場も併設するなど、ユニークなビジネスモデルも追求する。着実な技術革新と新たな可能性の探求。様々な切り口から突破口を切り拓く國見社長の手法は斬新で、ロープアクセス業界にこれまでにない選択肢が現れることを期待せずにはいられない。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。