建築部を創設したボルテックス。技術力を根幹にした挑戦に入る
更新日:2025/4/25
「区分所有オフィス®」を主軸に資産形成コンサルティングを行うボルテックス(東京都千代田区)が、2021年4月に建築部を創設した。立ち上げの指揮を執った秋元竜也氏が、建築部の部長に就任。社内では、新たな売り上げの柱を確立することや、建築リテラシーを社内に浸透させること、顧客の経営資産に付加価値を創出するなどを目標に掲げており、これまでにない風を社内外に行き届かせている。

秋元部長は、建築現場施工や建築設計、コンストラクション・マネジメント(CM)、アセットマネジメント(AM)、不動産デューデリジェンス(DD)、銀行系不動産会社でのファシリティ・マネジメント(FM)などを経験後、2020年4月にボルテックスに入社。新卒で入った建築会社でワークライフマネジメントをうまく取り入れられずに体調を崩して入院した頃から、「建築業界をより良く変えていきたい」と考え始め、今回はその具現化に挑戦する形となっている。


新部署は、1年目から売上約1億円を記録し、原状回復工事や自社でのバリューアップ工事を軌道に乗せるなど、順調なすべり出しを見せている。しかし、それに慢心することなく秋元部長は「最近では、グリーンビルディングやESG不動産の重要性を考慮し、当社が所有する37物件(2023年1月31日時点)で BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)を取得し、来期も追加取得する予定だ。CMの内製化やインハウスエンジニアの技術向上、新たな企画開発など、今後も社会情勢の変化に応じて先手を打っていく」と話す。入社当初から「技術職員は、全社員の1割ぐらいは必要」と主張し続けており、現在の所属員を20人まで増員することができた。だが現在、ボルテックスの社員数は513名(2022年3月31日時点)。他の部門でも課題が残る現状に「理想を体現する過程には膨大な労力を要するが、技術力こそが付加価値の1つであり、この根幹だけは絶対に軽視できない部分。不動産ディベロッパーとして盤石な体制が構築できるよう、与えられた環境でベストを尽くしていく」と意気込みを語る。秋元部長が、一級建築士として様々な現場で経験を積んできたからこそ、実現できる改革が現在進行形で行われている。

現在、ボルテックスが取り扱うVORTシリーズは約170棟。竣工年にもよるが、これらの建て替えを迎える時期は、15年ほど先になることが予想される。秋元部長は「この分野の設計・施工を当社が担えるようになって、真の不動産投資コンサルティングが完結すると考えている。今は、この領域に進出するための準備段階だが、常に部署創設時の目標を忘れることなく、全社一体での躍進が達成できるよう力を尽くしていく」と先を見据える。
取材中に秋元部長からは、「自問自答しても答えがない時があるが、もう引き返さない」という挑み続ける者として、真摯に自らと向き合う姿勢と、決して同じ場所に留まらない決意の言葉が溢れ出ていた。最後は「これほど桁外れの充実感があることは、これまでの人生では経験したことがなかった」というセリフで締めた。この恍惚と不安の中、秋元部長および建築部が、どのような過程を踏んで建築業界を健全化していくか目が離せない。



この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。