クール・ブルー参入を機に、山田工業が組織基盤の強化
更新日:2025/8/13
山田工業(兵庫県尼崎市)が、今年5月に「クール・ブルー(Cool Blue)」に参入した。クール・ブルーは、建設などの現場で仕事をする、俗に言う「ブルーカラー業界」で働く価値・尊さの周知を目的に発足した団体。協栄電気工業(広島市東区)の石本英成社長が発起人となり、データを用いた適切な情報発信や講演などを実施することで、建設業界に必要な人材確保などを目指している。岡本光永社長は、「アメリカでは、現場作業者の地位が格段に上がっている状況にあり、日本でも同様の流れを作りたいと参加を決めた。活動はまだ始まったばかりだが、全国の建設企業とも協調できるような動きを見せたい」と意欲を見せている。


岡本社長が、祖父の創業した山田工業の代表取締役に就任した時期が2021年6月。当初より「現場で働く職人が報われる環境を作る」という理念を基に組織運営を心掛けてきた。しかし、昨今の外的要因により利益率の変動が顕著になる情勢を見て、「まずは組織力の強化を最優先にすべき」と新たな方針を掲げ業務に取り組む。最近では、現場で働くいわゆる「ブルーワーカー」の魅力を、何とか会社のブランディングに繋げようと試みており、InstagramなどのSNS運用も開始。慣れない業務となるが、「SNSは定期的な更新が不可欠。とにかく次の糸口が見つかるまで続けよう」と積極的な動きを止めずにいると、徐々に採用に関する問い合わせや会社の知名度向上などに変化が見られたという。これまでは土木・道路舗装工事を主軸に事業を展開してきたが、近年入社した社員の実績により配管工事や貯水槽の清掃などの項目も追加でき、会社全体の選択肢を拡大することにも成功しているようだ。


会社としての長期的な目標を岡本社長は、「売り上げ100億円の元請け企業になること」と宣言する。実現には、公共工事の割合や営業・施工管理の社員を増やす必要があるなど、克服すべき難題は多い。しかし、緩やかだが堅実かつ逞しい経営を続ければ、「いずれは、1つの点も綺麗な線になると信じている」と希望を見出す。社内にはインドネシア人の実習生も在籍しており、「彼らとの信頼関係が更に強化できれば、祖国とのパイプ役となるビジネスが生まれるかもしれない」と可能性も示す。現在は、AIを含めたDXの導入も積極的に検討し始めており、既に次の成長を見据えた動きも見せている。「建設現場で汗を流す人々の魅力を高めたい」。岡本社長の背骨ともなっている、この確固たる信念は全国に少しずつではあるが確実に波及しており、この蓄積こそが業界全体の変革に繋がっていくはずである。


Instagram:https://www.instagram.com/cool_blue.yamada/
関連記事:業界リーダーに迫る 『協栄電気工業が「クール・ブルー」で業界改善』
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。