新社長就任の山一建設。DX実装で更なる可能性を模索
更新日:2025/4/25
今年6月、山一建設(福井県福井市)の代表取締役社長に、山崎興規氏が就任した。就任以来、「建設業アゲ」をスローガンに、新技術の導入や広報活動に取り組むなど、幅広い挑戦を続けることで業界全体のイメージアップを図っている。

4人兄弟の長男だった山崎社長は、幼少期から跡取りとして育てられた。事業継承に対しては周囲の刷り込みの効果もあり、全く抵抗がなかったようで「修行は厳しかったが、入社から数年間は遊ぶことに全力だった」と率直に当時を語る。「続けていればいずれは社長になれるだろう」とも考えており、「経営や会社の将来などについては、全く考えていなかった」と自虐気味に語る。仕事には身が入らず、日々を無為にやり過ごす中、ターニングポイントになったのが、2004年に発生した福井豪雨。山からの流水や大量の土石流で道路や線路が崩壊し、特別史跡である一乗谷朝倉氏遺跡周辺も甚大な被害に見舞われた。この際、建設業者として第一線で災害復旧に当たり、地域住民から多くの感謝の言葉を受けたことが、「建設業は単なる家業ではなく、社会貢献に繋がる重要な仕事だという認識に変わった」と振り返る。それまでは生きている中で、周囲から感謝されたことは極めて少なかった。自身の中で本件が事業継承に向けた重要な出来事として刻印されており、その後は社員のマネジメントや自身の技術力向上に本腰を入れるようになったという。



現在は、採用活動と共にSNSを活用した広報活動にも注力する。投稿を通じて積極的に自社をPRしており、工業大学や児童養護施設にも自ら足を運ぶ。将来の進路に迷う若者に向けて、建設業の社会的意義や魅力を直接伝えるなど、あらゆる手法で次世代の人材獲得を試みる。最近では、建設用3Dプリンターを筆頭に新たな技術を導入するなど、これまでにない可能性にも貪欲に触れることを心掛ける。「今後、職人の高齢化や人手不足を要因とした業界全体の停滞が予想されるが、その際に突破口になるのが『DXを駆使できるか否か』のはず。特にICT施工は重要度が増すはずだから、吸収力の高い若手技術者を採用し、早期に盤石な組織体制を構築したい」と先を見据える。目標は「1~2年以内に、現在外注しているICT部門を内製化すること」。DX導入に頭を悩ませる建設企業は、山一建設がICT実装を完遂するまでの過程にこそ着目すべきであり、その道のりには汎用性があるはずだ。



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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。