新会長就任を機に「未来に続く道を創る」 全国道路標識・標示業協会中部支部静岡県協会
更新日:2025/7/24
今年4月、全国道路標識・標示業協会中部支部静岡県協会の会長に海野景司氏(中部ロードテック・代表取締役)が就任した。22~24年度に同協会で実施した静岡県内の区画線剥離状況をAIで把握・数値化する調査が高く評価されたことを受け、「自動運転時代を見据えた全国に先駆ける先進的な取り組みだった。今後は標識整備にも力を入れていきたい」と次なる展開に意欲を見せている。

調査は県土木事務所が管理する総延長約2780kmの道路を対象に実施。協会員24社が分担し、通常業務の合間に当たる約1週間で実施。画像を1枚ずつ確認する地道な取りまとめには約3か月を要し、「今後は技術活用や参加企業間との連携を強化することで、更なる効率化を目指していきたい」と課題を語る。整備後の県民アンケートでは、区画線の視認性・安全性が向上したことに、多くの肯定的な声が寄せられた現実を受け、「2024・25年度における区画線再整備の予算確保にも繋がり、継続的な維持管理への道筋が整った」と手応えを示す。今回の調査を契機に、静岡県警察・県交通基盤部・協会の3者が官民連携協定を締結。「県民の安心・安全を守る上で、極めて意義深い前進となった」と先々の展開にも期待を寄せている。

海野会長は、中部ロードテック(静岡市駿河区)の代表取締役を務めている。親戚の紹介をきっかけに入社し、現場作業や営業など幅広い業務の経験を積んできた。新東名高速の工事では現場監督として携わり、約30メートルの大型標識を設置。「大きな案件だったこともあり、現場が完成した後の達成感は格別だった」と振り返る。その後、2016年12月に社長に就任し、地域社会の維持・改善に向けた組織運営を心掛けている。

協会としての今後の方針を、海野会長は「標識の整備に重点を置くこと」と明言。県内の至る箇所で剥がれ・劣化による視認性の低下や落下のリスクが起こるなど、安全面での課題は顕在化している。「カーナビに信号名が表示されるなど、協会での活動は日常生活の事前予防に直結するケースは多い。早期の整備を実現できるよう、団体を超えた協力を加速化したい」と具体策を述べる。既に県内の約3140枚の標識に対し、劣化状況の調査を終えており、その結果を基にした修繕提案を行う意向を示している。

業界共通の課題として挙げるのは、言うまでもなく「技術者の確保」。今回の調査を通じて、道路インフラの重要性や社会的意義が改めて認知され、国土交通省・中部地方整備局との意見交換会など、多くの場で発表を求められた。「この良い流れを若い世代への浸透に活かせるよう、協会としては全力を尽くしていく」と並々ならぬ意気込みを見せる。「団体のトップとしての重要な使命は、若い世代が関心を持ち、将来を担いたいと思われる業界に近付けていくこと。課題は多いが、今後も『未来に続く道を創ること』をメインテーマに団体運営を手掛けていく」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。