クラフトバンク総研

石川県鉄筋業協同組合

更新日:2026/5/12

【20年務めた理事長職を退任へ】

 石川県鉄筋業協同組合の小寺洋志裕理事長(コデラ・代表取締役会長)が、今年5月21日の通常総会で退任する意向を固めた。昨年2月には、自社の代表取締役社長を息子である小寺宏宜氏が引き継ぎ、「やはり組合の運営も各社の社長が実施すべき」と決断した。丸20年の就任期間では、リーマンショックや民主党政権、新型コロナウイルス拡大など、様々な社会的局面を迎えたが、「2012年に着工した北陸新幹線の工事を機に、徐々に単価を上げられたことが大きかった」と回想する。団体内で掲げ続けた目標は、「とにかく鉄筋工事業に携わる職人の処遇を改善すること」。小寺洋理事長は、これまで取り組んできた課題解決を後世に託す形で勇退することになった。

【適正単価委員会を活かす】

 石川県鉄筋業協同組合では、年2回の頻度で「適正単価委員会」を開催している。これは団体の所属企業に当たる職長の平均年収を1000万円、一般社員は600万円に上げるには、単価をどの位置に設定すべきかを議論する場であり、「1トン・10万円を目指す交渉しよう」という合意に基づき実施している。開始当初は、取り組みに懐疑的な会員も存在していた。しかし、1トンの単価が6万円だった時期に「来年は7万円を目指す」と公言し、標準見積書を駆使しながら翌年に達成すると、組合員が「やり方次第では自分たちでもできる」と理解し、自ら率先した動きを見せる変化があったようだ。「無事に単価が上がれば、前年比70%程度の仕事量でも売り上げを維持でき、それ以上をこなせば自社の利益拡大に繋がると体感できた現実は大きかった。この成功体験があったからこそ、組合内では『今期は全国で1番の単価を目指そう!』という気概に溢れている」と現況を語る。

【同業者同士で争う時期ではない】

 小寺洋志裕理事長に、単価が上がり続ける状況を、ゼネコン側はどのように捉えているかを聞くと「歓迎されている」と断言する。組合では日頃から各ゼネコンとの調整を図っており、「年齢別就労者分析結果」を提示すると「このままだと若者は入職しないから、単価は上げ続ける必要がある」と理解を示しているという。組合員によるダンピングのリスクに関しては、ゼネコン内で設定する「名義人制度」を活用することで専守を実現。理事長に就いて間もなく、「もはや同業者同士で争っている場合ではない」と未加入企業を説得して回った効果もあり、現在の石川県内にある鉄筋工事会社の加入率は99%に達している。就任初期から、戦略に基づいた活動と既存の仕組みを利用することで、業界の改善・改良ができると信じてきた。小寺理事長は「実際に成果を得られた経験が、組織としての可能性を拡張した。この良い流れを更に活かせるよう、今後は団体のバックアップに徹していきたい」と並々ならぬ思いを抱く。

【北信越5県政策委員会にも注力】

 組合としては、富山・福井・長野・新潟県にある各鉄筋工事業団体と共催する「北信越5県政策委員会」での活動にも注力する。石川県では、1トン・10万円に手が届く領域にまで辿り着くことができている。このプラスの余波を北信越に伝播させようと、委員会では今まで蓄積してきたノウハウを惜しみなく共有する。今年7月から石川県の応援単価が全国で1番高い2万7000円に上がる見込みを受け、北信越もそれに続く形を取れている。特に新潟県の応援単価は2万50000円に到達するなど、これまでにない好循環をエリア全体にもたらしている。「順調に単価を上げられた実績は、容易な安値受注の事前予防にも繋げられている。まだ課題は多く残る現状だが、このような県の枠組みを超えた動きを続けることで、鉄筋業界全体を盛り立てていきたい」と確固たるスタンスを堅持する。

【次の世代も「処遇改善」を念頭に】

 次に団体のトップを担う後継者に対して、小寺理事長は「やはり現場で働く職人の『処遇改善』を最優先事項に掲げた活動を続けてほしい」と願いを込める。人手不足の影響により、業界全体が新入社員の初任給を上げて募集する傾向が目立つ。しかし、「その前に在籍する社員の給与をアップできる体制を作らなければ、これまで会社を下支えしていた貴重な人材を失い、会社の底が抜けるリスクすらある」と警鐘を鳴らす。自社では6年ほど前から完全週休2日制を敷き、見立て通りの職場環境を構築できた。それ故に各会員企業に対して「一刻も早く盤石な体制を組み込まなければ手遅れになる可能性もある」と早期の対応を促す。自身の中では「建設業は、季節を問わず心身を駆使しながら、1つの建物を作り上げる尊い仕事。それにも関わらず製造業の年収に追い付かない現実が口惜しい」という本音はある。この現状に対して、「未解決の問題点は次のリーダーに託し、当面はサポートに全力を尽くす」と覚悟を決める。今月21日に開かれる総会では、誰が団体のトップを担うことになるのか。鉄筋工事業界の今後を占う見込みもある、当日の決定に注目である。

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