負のスパイラルを総力戦で打破に繋げる 静岡電業協会
更新日:2025/6/5
昨年5月に開催した静岡電業協会の総会で、夏目英明会長が再選を果たした。2012年に一般社団法人として認可を受けて以来、1人で会長職を担い続け6期目を迎える形となった。今期での役割を「次の世代にバトンを繋げる助走期間としたい」と話す通り、世代継承も意識した活動を実施する予定である。

静岡電業協会は2022年7月、神奈川県電業協会と山梨県電設協会、長野県電設業協会、愛知電業協会、4県の団体と災害時の相互応援などに関する協定を締結。いずれかの管内で大規模災害が発生し、被災県協会のみで十分な復旧工事が見込めない場合、各協会が迅速かつ円滑な応急対策が取れる体制を構築した。夏目会長は、「昨今、巻き起こる想定外の天変地異を考慮すると、万が一に備えた近隣県の協会との協力が不可欠と考え締結を決めた。5団体での定期的な訓練を続けることで応対力を向上させ、緊急時でもスムーズな協力が出来るようにしたい」と見立てを述べる。天災発生時に真っ先に現場に駆け付けるのは、地場に根差した建設業者。特にインフラとして早急の確保が求められる電気分野の対応は文字通り生命線となるので、先行きを注目する必要がある。


夏目会長は「もちろん災害協定の遂行は、最優先事案で全力を尽くす。しかし、私は建設業界の根幹を支えるはずである若者の入職者数が、年々減り続ける現実も変えたい」と強い危機感を示す。毎年、地道に工業高校などを回り、新卒社員の獲得や会員加入を目的にした活動も続けている。しかし、日を追うごとに「いつまで現状維持を続けられるのか?」という考えが悲観的に向かう時間も増えてきた。「安定的な待遇を示さなければ若手の増加は見込めない」→「だが、単価を上昇できる見通しはない」→「この悪循環を是正するため、長時間労働も選択肢に入れた賃金アップに挑戦したい」→「ただ働き方改革の推進によって実施できない壁に直面する」。このスパイラル打破の模索に頭を悩ませる毎日を送っている。


これまで静岡県電業協会は、「日本の電気インフラを守る」という至上命題のため、様々な施策を打ち立ててきた。私たちの生活から各種の産業まで、一瞬たりとも欠かすことなく電気を灯し続けた実績。電気設備の構築と保全を通じて、地域の快適な空間づくりを継続できるか否か。現在地が過渡期で、行政の施策次第では、想定の事態が発生してしまう可能性もある。夏目社長は「あらゆる場面において法令順守は当然のこと。経営者・団体のトップとして、この難局でも最適な突破口を見出せるよう、この任期を全うしてみせる」と並々ならぬ覚悟を見せる。課題は山積だ。しかし、夏目会長の指摘こそ組織を率い続けた経営者の本音であり、建設業に従事する全ての人々が目を背けてはならない難題と言える。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。