クラフトバンク総研

静岡県マンション・ビル改修技術協会

更新日:2025/6/18

【マンション管理組合に寄り添う】

 2024年8月に、静岡県マンション・ビル改修技術協会が発足した。同協会は、マンション大規模修繕など建物改修に関わる施工会社やコンサルタントの育成、建物改修の地位の向上、技術力の底上げを目的とする。マンション大規模修繕や長期修繕計画の策定などにおいてマンション管理組合や建物のオーナーなどのサポートも行う。森英智会長(アールテック・代表取締役)は、「分譲マンションの大規模修繕は特殊性が強く、静岡県内には管理組合をフォローできる企業が圧倒的に不足する現実を懸念し、創設を決意した。改修市場に携わる様々な業種が一堂に会することで、情報共有・技術研鑽を続け、リニューアル産業を活性化していきたい」と意気込みを語る。改修を専門にする設計者やコンサルタント、管理会社、施工会社、メーカー、ディーラー、専門工事会社の全てが知恵を持ち寄ることで、マンションの管理組合に寄り添える動きが加速している。

【コンサル・専門工事会社が足りない現実】

 森会長は、マンション大規模修繕のコンサルタント会社で修行後、家業である塗装会社を継いだが、地元・静岡では「施工以前の調査・診断・修繕設計を行う専門コンサルタントの不足により、管理組合が困窮している」ことを知り、コンサル業務を主軸とする会社に事業転換した。その後、県内ではコンサル会社だけでなく、専門工事会社も足りていない現実を目の当たりにし、「専門性の高い大規模修繕の知識やノウハウを習得し、最先端の技術を学ぶ場が必須」と考えるようになった。静岡のマンションでは、コンサル業務も大規模改修も首都圏の会社に委託することが主流である。しかし、県内に支店・営業所を持たない施工会社が手掛けた案件では、その後のアフターメンテナンスや少額な維持保全は引き受け切れないケースが多い。このため、静岡に拠点を置く企業こそが参画する機会を創出し、協会として地域に密着した勉強会などを実施することで、ユーザーを積極的に支援している。

【「見積金額が安い」=リスク】

 分譲マンションに関する大規模修繕コンサルタントは、合意形成のサポートに始まり、調査・診断を経て長期計画を立て、設計後の施工会社選定、工事の監理まで携わる。ここでは通常の設計会社では難しい知見が求められる他、居住者の暮らしに配慮した上での施工計画、工法選択も求められる。森会長は「静岡の市場傾向として、管理組合は見積金額の安い企業を選び、施工会社もこの流れに応じる。俗に言う『間に合わせ工事』を慣習化したことで、『安かろう悪かろう』の連鎖を常態化させた」と分析する。正しい診断と長期保全に基づいた提案をしなければ、結果として管理組合に多大な費用を背負わせてしまうリスクがある」と、自身の責任を口にする。さらに、静岡のマンション大規模修繕の市場を正すためにも、これに関わる施工会社やコンサルタントを地元に育成することを理念に掲げる意義は深く、どこまで拡張していくか注目である。

【難易度では大規模修繕が最高峰】

「高度経済成長を経て、建物の長寿命化・メンテナンスがメイン市場に移行しているにも関わらず、設計・施工・建材メーカーなどの多くがいまだに新築市場に目を向けており、リニューアル分野が軽視されがちな風潮を変えたい」との強い思いが森会長の原動力となっている。技術的な観点から見れば、ゼロから建物を建設するより、既存の建物の劣化箇所を的確に把握し、適切な処置を行う方が困難である。しかし、「現段階では、この現実すら建設業界内で認知されていない」と声高に指摘する。協会名に「マンション」だけでなく、「ビル」と付した動機は、「ビルや賃貸マンション、学校、病院など、つまり建物全般の『改修技術』に注目してほしい」と思いを込めている。難易度においては、人が住まいながらの工事となる分譲マンションの大規模修繕だとも語る。

【業界全体を見通した対策を打つ】

 改正マンション管理適正化法により、自治体もマンション管理組合に適正な管理を催促・指導することが求められている。そうした意味でも、協会としては、「行政・他団体と綿密な連携をすることで、建物の維持保全と更に向き合い、技術的な協力を惜しまない体制を築きたい」と明確な意思を示す。安定的に顧客の立場に立って修繕周期を提案していくためには、まだ組織全体で克服すべき点も多い。特に静岡県内に、改修設計コンサルタント、大規模修繕専門の施工会社が極めて少ないことは喫緊の課題である。静岡県マンション・ビル改修技術協会では、今後もユーザー側や行政も含めた改修市場のニーズや課題を探りながら、健全な市場の醸成を目指していく。

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