磯部昭利さん(磯部官業・代表取締役社長)
更新日:2025/11/18
曽祖父が創業した会社の4代目として、20歳で家業に加わった。学生時代から左官業に触れており、事業承継に至った経緯も「自然な成り行きだった」と実感を込める。修業を経て35歳で社長に就任したが、時代はバブル崩壊直後。赤字続きで給料カットや人員削減を余儀なくされるなど、厳しい経営も体験したが、「ここ数年は、国の意識や職人の処遇が改善し始めている。単価上昇や追加工事の増加など、状況は確実に好転している」と明るい兆しを示す。


社内には長年勤める熟練職人が多く、確かな手仕事で難工事も着実にこなす体制が強みだった。しかし、昨今ベテランの退職が続き、技術の継承が新たな課題となる中、今春に実の息子とその友人がゼネコン勤務を経て入社。「5年を目途に現場での経験を積ませたい。飲み込みも早く、将来の明るい希望となっている」と微笑みを見せる。現在61歳。65歳での引退を視野に、培ってきた知見を次の世代に伝承する覚悟である。


若手の入職があっても採用環境は依然として厳しい。人員減少を見据え、新たな工法や素材の導入を進めるなど、柔軟な変化を継続する意向を掲げている。新潟県内では北陸建設アカデミーの講師を務め、各種技能講習や特別教育など地域全体の強化にも力を注ぐ。「若手が活躍できる環境が整うまで全力を尽くす」。確固たる信念を胸に、左官業を未来に紡ぐ挑戦は続いていく。

磯部官業のHP:https://www.isobe-kangyo.com/
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。







