南電工が「人」を最重視した躍進に挑む
更新日:2025/12/15
南電工(鹿児島市)の3代目社長である畠田祐輝氏は、「人が集まり、人が育つ会社、魅力ある南電工」をスローガンに会社を牽引している。これまで鹿児島空港航空灯火施設の維持業務や、復活を遂げた日本最大の城門「鶴丸御楼門」のライトアップなどに携わることで、地域の人々に「電気がある当たり前の暮らし」を提供してきた。「何かあったら、南電工!」という会社のモットーは、今もなお鹿児島県内で広く周知されており、設計から施工、アフターフォローまでを一貫して担える体制を強みに、社内改革と組織強化を進めている。



現在、会社として力を入れている分野が「人財育成制度」の運用だ。部署・社員ごとの目標を明確に提示し、現場指導や社内講習の体系を実現。個人の能力に依存する形ではなく、組織全体で成長を促す仕組みを定着させることに成功した。「中途採用においては、閉鎖的で肩肘の狭い印象が強かったが、社内を見える化したことで、これまで実践されていなかった事柄まで実施できるようになった」と新たな社風が着実に根付き始めた過程を語る。

電気工事業では、ベテランの領域に達するまで約10年の時間を要すると言われており、この現実に対応していくため、直近では8人の社員を新たに採用した。不況や人口減少など、先行きの不透明な課題を抱える中、畠田社長は「少しずつだが、これまでの取り組みに確かな手応えを感じている」と現在地を前向きに捉えており、離職率の改善や採用・育成体制を加速させる意志も固めているようだ。

鹿児島県内における電気工事の公共工事設計労務単価は2万4600円。畠田社長は「多くの関係者の協力が必要」と前置きした上で、「今後の目標は、労務単価の増額だ」と明言。正当な評価による処遇改善は不可欠であり、自身が所属する鹿児島県電設協会や鹿児島電気工事業協同組合での活動を通じて、業界全体の地位向上にも全力を尽くしている。昨今、AI時代を迎える中、畠田社長は「これからは、ブルーワーカーへの就職希望者は増えていくはず。当社では、その受け皿となるべく、魅力ある企業として突出した存在になり、業界全体を引っ張っていきたい」と決意を改めて示す。

掲げる目標は、社内改革、人材育成、業界全体の健全化など数多い。しかし、その全ての根幹には「人」が密接に関わっており、「この『人』に対する最適解を導き出せれば、『人が集まり、人が育つ会社』として確立できるはず」と見立てを述べる。会社は2027年6月には設立70周年を迎える。「電気は人々が生活する上で必要不可欠なもの。この大前提を経営の主軸に設定し、需要の大きい電気工事と向き合うことで、誇れる会社を作り上げたい」。畠田社長の原動力はシンプルだからこそ光を放っており、今後の更なる躍進が楽しみである。


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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。








