日本トンネル専門工事業協会
更新日:2026/9/25
【現場の実情を届けるために】
昨年、日本トンネル専門工事業協会の会長に横山英樹氏(横山工業・取締役会長)が就任した。同協会は、トンネル専門工事業の企業力を高め、社会資本整備や建設業界全体の発展を目的に設立した団体。前会長からの指名を受け、協会を牽引するリーダーとしての役割を担っている。就任の打診を受けた当初は、「周りは年間に数多くの案件を手掛ける大手企業ばかり。年間数現場ほどの当社が、業界のトップに立って良いものか?」と躊躇もあった。しかし、長く現場で経験を蓄積してきた横山会長は、「自分を育んだトンネル業界に対し、最後は全てを捧げても構わないと腹を括れた。中小企業の立場だからこそ見える課題もあるはず。専門工事業者が一致団結し、業界全体の地位向上や最前線の実情を届けられる体制を整えたい」と覚悟を述べる。

【綿密な連携の先を想定する】
バブル期には100社以上も存在していた会員企業は、現在50社ほどに減少しており、協会としては「大きな過渡期を迎えている」と現状を語る。改正建設業法の完全施行や労働環境の改善など、業界を取り巻く環境が変わり続ける中、横山会長は「昔は各社が『自分たちが一番』と自負し、自力のみで事業を進める一匹狼の集まりだった。だが、法改正への対応や急激に進むDX化などに対し、1社だけで乗り越えるには限界がある」と危機感を募らせる。このような状況下だからこそ、創設時から受け継がれている協会の理念を堅持し、「ニッチで特殊な工種だからこそ、会員同士が綿密な連携を見せ、業界改善に向けた道筋を指し示したい」と力を込める。

【旧態依然からの脱却を目指す】
横山会長の入職初期は、「粉塵や排気ガスで数メートル先も見えない坑内環境や、1日10時間以上も拘束する勤務体制が常態化していた」と振り返る。現在は、換気設備の進化や補助工法の定着により、安全でクリーンな現場へと劇的に変化を見せている。徐々にではあるが、かつての劣悪な環境からの脱却を果たし始めている現状に関して、横山会長は「協会では、他工種よりも高い給与と確かなやり甲斐を残しつつ、今の若い世代が求める8時間労働や安全な施工環境に応えるための活動も心掛けている。引き続き、旧態依然とした体制の打破を手掛けることで、志の高い若手の入職と自発的な成長を促していきたい」と中長期的な視点を指し示す。

【あらゆる可能性を発信する】
継続的な協会の活動が功を奏し、現在の現場では土日休みの推進に加え、正月や夏期に1週間~10日ほどの長期連休を確保する動きが定着している。「言わずもがなではあるが、若手の入職促進と定着率が業界の先行きを左右する。しっかり稼いでしっかり休める環境づくりは着々と進んでおり、この流れを止めないことが協会の役割だと捉えている」と実感を込める。近年では、従来までの閉鎖的なスタイルからの克服を掲げ、トンネル施工の重要性を外部に発信する広報活動も加速化している。ゼネコンと協調した現場見学会の開催だけでなく、YouTubeやSNSなどを活用したPRにも積極的である。「若い技術者が活躍する姿や最新の施工に関する魅力を積極的に発信し、一般の方々にもトンネル工事の価値を正しく認識されたい」と包み隠さず思惑を話す。

【残された時間を業界発展に費やす】
被災地の復興道路を始め、地域の暮らしや命を守るインフラを創り上げる仕事には大きな社会的責任が伴う。それだけに、苦難の末に現場が貫通して向こう側の光が差し込む瞬間や、開通後に住民から「命の道が繋がった!」と感謝される喜びは格別である。横山会長は「『お父さんがこのトンネルを作った』と家族に胸を張れる実体験があるからこそ、職人は厳しい現場も乗り越えられる」と醍醐味を語る。協会が掲げるスローガンは「人と品質を造り込むトンネル施工集団を目指して」。確かな技術で施工の「品質」を高め、次の世代を担う「人」を育て上げていく。横山会長は「残された全ての時間をトンネル業界の発展のために費やす」と宣言しており、今後の協会での活動に一層の力を入れていくことを誓っている。
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。







