100年企業に向け三輪塗装が事業承継に入る
更新日:2025/5/2

「これまで本当に申し訳なかった。全力で改善していくので力を貸してほしい」。
三輪雄彦社長は、17年前に父親が創業した三輪塗装(岐阜県関市)の代表取締役に就任し、現在では売り上げを7倍以上に伸ばすことができた。近年会社の経営状態は安定していたが、なかなか従業員の定着しない状況を憂慮し、社内の不満を洗い出し始めると、一部の社員から「社長が単独で走り過ぎる」「自分の意見を聞いて貰えない」などの意見が続出。自社の問題点が社長自身の問題であり、社風に影響していた点に気付き、全員の前で謝罪し出直しを誓った。会社は、主に公共・民間建築や住宅外装リフォームなどの塗装工事を手掛け、今年創業60周年を迎えている。


外部からは順調に社内改革を遂げたように見えたが、社員からの指摘によりあぶり出された自身の過ち全てを受け入れて実施するまでの過程は「今思い出しても吐き気を催すほどの最悪で苦しい日々だった」と振り返る。「社長交代以降、顧客基盤が弱い住宅塗装や企業物件などの新規領域を確立し、売り上げ向上という結果は残した」という自負はあったが、「全て自己弁護による言い訳」と考え直し、即座に自ら全否定を心掛けた。その本気の反省以降は、徐々にではあるが独断の色が強かった社内会議は段階を経る形に変更し、全ての決断をリーダー会議で決めるようにしたこと。また月給・賞与制度の明確化やSNSの更新、資格取得によるインセンティブを取り入れたことなどが功を奏し、社員のモチベーションが上がり始め、社内の雰囲気も良くなっていったという。


三輪社長は現在、「組織として定期的な社員の採用と育成を可能にするシステムを構築し、スムーズな世代交代を行える下地作りに注力している」と話す。「会社の永続を見据えると、事業承継の準備をスタートする時期は今が最後のチャンス」と覚悟を決め、自身の引退も10年後の65歳に設定した。2022年の今年は採用2名のうち1名は、社員が繋がりのある人物を連れてくる形で入社するリファラル採用を実現し、来年2023年には長男、再来年2024年には次男の入社が内定。親族以外の若者の採用を引き続き進めていることからも分かる通り、既に三輪塗装には事業承継に関する明るい兆しが見え始めている。


「今後は、当社が100年企業になるよう事業を展開していく。依然として改善点が多く存在していることは理解している。しかし、この壮大な目標を具現化していくため、先代から譲り受けたバトンを次世代に渡す活動を続けていきたい」と展望を語る。三輪社長には、「顧客、会社、社員、協力会社、地域住民の全てが満足してこそ、企業の存在価値がある」という前提意識が常にある。事業承継後に、世代を超えて信頼される会社として業界に浸透しているのか。三輪塗装の目的達成までの途中経過にこそ、我々は注視すべきである。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。