尾鍋組がエコジオ工法で斬新な選択肢を提供
更新日:2025/5/2

尾鍋組(三重県松阪市)が、全国にフランチャイズ展開する「エコジオ工法」の施工代理店数は61箇所、累計施工件数は約2万6千件である。エコジオ工法は、砕石(小さく砕いた自然石)だけを用いて施工し、地中に廃棄物を残さない地盤改良技術。セメントや鋼管と比べ、材料生産におけるCO2排出量が少なく、地中にセメントや杭を残さないため、「将来の撤去費用を考えると土地の価値を下げる可能性が低い」と好評だ。2022年5月には、これまでのエコジオ工法に関する研究開発・普及活動が評価され、三重大学・三重ティーエルオーと共同で、第49回「環境賞・優秀賞」を受賞した。
2007年に尾鍋組と三重大学の酒井俊典教授が、共同研究により開発を始めたエコジオ工法だが、尾鍋哲也社長は「技術開発の過程は、試作と失敗の繰り返しで、周囲からは『今やろうとしていることは不可能だ』と言われた」と振り返る。最も苦悩した時期が2011年頃。技術開発の累計投資額が年間売上を超えたにも関わらず、そこから更に残土を出さない技術の開発を促進。試行錯誤の末に「エコジオZERO工法(無排土型)」の完成に至ったことがターニングポイントだったという。これを契機に会員数は増加し、現在では全国(北海道、沖縄を除く)に提供できる施工代理店網を構築している。
現在、尾鍋組では、加盟した施工代理店に対して、工法に関わる装置や設計、施工、管理方法に加え、異分野から参入する企業でも事業に取り組めるよう営業研修や同行営業などの支援も実施。施工代理店や装置メーカーなどで組織するエコジオ工法協会では、技術研修会などを開催し、技術の改善状況や採用事例の共有などを行っている。最近ではYoutuberとの連携も実施するなど、知名度向上に向けた新たな取り組みも開始した。
「家を建てる時、ほとんどの建材は消費者が自身の価値観で選ぶが、地盤改良工事では選択肢のない場合が多い」と尾鍋社長は話す。取材中には、「フェア」「透明性」「情報開示」という言葉が頻出。「地盤改良工法も建材同様に、『価格』だけでなく『価値や特徴』など、消費者の価値観で選択できることが重要だと考えている」と持論を語る。「今後は、エコジオ工法の知名度の向上に努めると同時に、住宅会社からの更なる信頼が獲得できるよう力を入れていく。地球環境の保全やSDGsへの取り組みが求められる現在、住宅・建設業界にエコジオ工法が必要不可欠と認知されるよう、与えられた環境でベストを尽くしていきたい」。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。