3代目社長に渡邊裕介氏が就任。新体制のリブランが見据える未来
更新日:2025/6/5
今年4月、賃貸マンション開発などを手掛けるリブラン(東京都板橋区)の代表取締役社長に渡邊裕介氏が就任した。創業家でなく社員登用による初めての社長となり、一度退職した後に出戻ったという異色の経歴を持つ。24時間楽器演奏が可能な防音賃貸マンション「ミュージション」や、中古物件探しからリノベーションまでをワンストップで行う「てまひま不動産」など、不動産の基軸となる間取り(PLAN)・場所(PLACE)・価格(PRICE)の3つのポイント(3P)の他に、新たな価値を生み出し続けてきたリブランが更なる飛躍に向け舵を切った。

就任直後から、主力事業『ミュージション』と『てまひま不動産』の規模拡大と、会社の管理戸数を3年後に1000戸に成長させる目標を設定。それと並行して、これまでにない需要獲得を見据えた「ゲーミングマンション」の提供を開始するなど、新たな主力事業の確立を目指している。気持ちだけが急いでしまう日もある。しかし、そのような時に渡邊社長は「中期的には経営基盤は安定している。今は不必要に焦らない。しっかりと10年以上先を見据えた『会社としての新しい柱』の構築に注力すること」と自分に言い聞かせる。社内では、社員同士の意思疎通がスムーズでないと感じ、原則・全社員出社に切り替えた。オンライン上だけでは、『とりとめのない些細なやりとり』の共有がしにくくなり、そのような部分にこそ「斬新なヒント」が潜んでいると捉えているようだ。

「99人に嫌われても良いから、1人から異常に好かれる商品を」というコンセプトで生まれたミュージションについて、渡邊社長は「地方展開を視野に入れていく」と明言。詳細な時期は未定としつつも、仙台や大阪、名古屋、福岡などで調査し、商機を見出せればいつでも取り掛かれるよう既に準備している。これまで長い年月をかけて培った全国のオーナーとの盤石な関係も強みで、各地で深夜でも気兼ねなく演奏できる人々が増える日々が待ち遠しい。


「直近では、ミュージションのブランド価値向上が至上命題だが、長期的にはインバウンド需要を獲得する施策を打ちたいと考えている。コロナ以降、激減していた海外からの来訪者だったが、ミュージションの防音機能をホテルやシェアハウスなどに組み込むなど、チャンスは多いはずだ。当社は『異端性』を最大限に活かすことで、新たな価値観を生み出してきた企業。今後も社員からの提案を即座に実行できる体制を武器に、特別なサービスを提供し続けていきたい」。現在、渡邊社長は43歳。鈴木雄二会長から引き継いだバトンを、どのような形で次の世代に託すのか―。事業承継で行き詰まりを見せる企業が多い中、既に先を見据えて走り始めたリブランの道筋は貴重である。
過去の掲載記事=「10年後の、その先へ。リブランの社長がいま事業承継に踏み切る理由」
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。