業界の地殻変動を試みる 長崎県建設業協会・支部青年部連合会
更新日:2025/6/2
2022年11月、長崎県建設業協会に「支部青年部連合会」が発足した。山下忠則部会長(堀内組・代表取締役)は、初代・西山潤一郎部会長(西海興業・代表取締役)からの重役を引き継ぎ、「若年者の確保と育成」に心血を注いでいる。支部青年部連合会は、若手経営者が働きやすい環境づくりや地域貢献、業界のイメージアップなども手掛ける。青年部の創設により、他県にある業界団体や発注当局とも積極的な意見交換ができるようになり、協会としての可能性拡張にも繋げている。

協会では昨年11月、工業科を有する県立高校6校と「県内における工業教育の充実・発展、人材の確保・定着の促進」を目的にした連携協定を結んだ。連携協定に基づく活動の中心的な役割を青年部会が担い、今年度からまずは長崎工業高校建築科を対象に測量実習やドローン実習、施工図実習などを指導している。山下部会長は、「県内の工業高校を卒業した半数が県外に就職する現実を変えたかった。今回の締結が入職者の減少を食い止める一手になるよう細心の注意を払っていく」と意気込みを述べる。まだスタートラインに立ったばかりの状況だが、生徒が建設業界に関心を向ける企画の見極めを常に考え、その布石を他校に広げることも心掛けている。今年5月には、鹿児島県建設業青年部会と初めてとなる意見交換会を開催。両者が抱える課題を共有し、業界のイメージ向上などを一致団結して取り組むことを確認した。設立3年目ながら活動の芽が着実に伸びており、今までにない横の繋がりも強化できている点も特徴である。


山下部会長には、「私たちで長崎の礎となる建設業を確立し、次世代にそのバトンを継承する」との信念と、「部会長の立場から会員の総意を発信し続ける」という強い覚悟がある。人材の確保・育成には盤石な経営基盤が欠かせないため、国土交通省や県といった工事発注者とも協調し、業界全体が活性化のために全力を尽くす必要がある。「各社は身を切る思いで給料を増額し、福利厚生を充実させている。就業規則の見直しに迫られ、働き方改革に苦心する今、安定的な工事量も確保できるよう連携を図っていきたい」と全体のバランスを重視する姿も印象的だ。


山下部会長は、「建設業は基幹産業として、将来に渡り地域に貢献し続けられる魅力的なもの。平穏な日常、災害時など施工物は千差万別だが、それらが集まり『まち』を創り上げられる充実感は他には代えられない。今後もこのような建設業の誇り・多幸感を若者にも伝えられるよう、趣向を凝らした事業推進を続けたい」と思いを語る。残りの任期は1年あまり。日を追うごとに会としての存在価値を高めていく長崎県建設業協会「支部青年部連合会」。建設業界の地殻変動が、長崎県から巻き起こることを期待したい。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。