ON―SITE Xで先陣を切る。加和太建設がスタートアップと業界変革へ
更新日:2025/6/5
加和太建設(静岡県三島市)が7月、地方の建設企業とスタートアップをつなぐDXコミュニティー「ON―SITE X(オンサイトエックス)」を開設した。全国の地方建設企業とスタートアップの双方に、オンラインでマッチングする機会を提供し、建設業の課題解決に向けたプロダクト開発などを支援している。ON―SITE Xの運用に当たり、河田亮一社長は社内にスタートアップ共創事業部を創設。事業統括責任者に近藤剛氏、コミュニティマネージャーに小松央美氏が就任した。


小松氏は、「元々、当社は『LtG Startup Studio』という、地方から世界に羽ばたく起業家・ビジネスを生み出すためのプラットフォームを運営している他、自社でもシステム開発を行っており、スタートアップの持つ優れた課題解決力を理解していたので、ON―SITE Xに参画できたことを嬉しく思う。社長の河田が建設業を変えたいと考え続けてきたことは入社時から知っている。建設業界の改善に有力な選択肢として認知されるよう最善を尽くしたい」と高ぶる気持ちを話す。

近藤氏は「ON―SITE Xにより、ITとデジタルを活用した建設業界の変革を実現し、建設業を通じたまちづくりに取り組めると確信し入社を決意した。私自身、大学時代は土木を専攻し、これまでクラウドに関する技術開発やスマートシティによるまちづくりなどに携わってきた。地方建設業だからこそスタートアップと共創できる要素は想像以上に多い。引き続き当社と共鳴できる企業を集め、業界を変えていくきっかけを作りたい」と先を見据える。地元出身である2人の言動には、「生まれ育った静岡から業界変革を進めていく」という強い気持ちが溢れている。

斬新かつ的確な取り組みを続ける現在の加和太建設だが、リクルートと三井住友銀行を経て入社した河田亮一社長は「当時、現場の職人の多くが、公共土木など決められた自分の持ち場に専念することを重視していた。会社をもう一段上のステージに飛躍させるには、このような状況を打破し、新たな取り組みをしないといけないと悟った」と振り返る。しかし、入ったばかりである自分が強い主張を繰り広げても、極端な軋轢を生んでしまうだけ。そこで社内の経営陣向けには「会社の売り上げがアップし、もっと利益が出せるようになるから」と了承を取った上で、「会社のミッション・ビジョン・バリューに基づいた業務推進」に着手し、自身の意見に賛同する社員を徐々に増やしながら定着を図ったという。


「会社の骨格が固まった後は、安定的な収入源である公共土木工事を残しながら、民間建築工事を増やしていく戦略を取り入れた。開始から比較的早く実績を伸ばすことができ、今では建築民間工事が全体売り上げの8割近くを占めるまでに成長した」と胸を張る。無事に実施できた社内改革だが、実際の現場では地道かつ堅実な社内調整と、気の遠くなるような営業・施工の努力が存在した。当時の社員が手掛けた軌跡を伝える研修プログラムは今なお残っており、このような過程を積んできたこと自体が「会社の財産」と河田社長は考えている。
今回、開設したON―SITE Xも、過去の下地があるからこそ「どのようにすれば建設業界に対して良い影響を与えられるか」を熟慮し、「地場ゼネコンのネットワークを構築し、建設業界の参入の際に戸惑うスタートアップに解決の糸口を見出す」という結論に行き着いたに違いない。

河田社長は「当面は、当社が先陣を切って新しいことに取り組むと同時に、業界全体を良き方向に導きたいという、同じ志を持つ各企業との協力体制を強めていく。1社で実現できることには限界がある。課題はまだ多い状況だが、地方建設業の在り方を変え、地方から日本を元気にするという当社の目標を遂行できるよう、今後も継続的な成長をしていきたい」と展望を述べた。「世界が注目する元気なまちをつくる」。この明確なビジョンを達成するため、今日も加和太建設は社員一体となった躍進を続けていく。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。