大浦工測、「SCAN to BIM」需要を見越した活動を開始
更新日:2025/5/2
大浦工測(東京都北区)が、今年5月に創業60周年を迎えた。大浦章社長は、建設省(現・国土交通省)の関東地方整備局に勤務後、30才の時に父親と叔父が創業した大浦工測に入社。その頃からGPS測量や3Dデジカメ計測サービスを開始したことで、会社に新たな選択肢を加え、2004年に35歳で代表取締役に就任した。現在は、首都圏を中心に建築・土木・プラント事業などの分野でDXも取り入れた工事測量を行っている。

建築部門では、都心の大型再開発による需要が多く見込まれており、既に5年単位での経営の安定化は見通せている。しかし、「その更に先を見据えると、新しい事業体制を確立しなければ、企業永続の実現は難しくなる」と危機感を持ち、3Dレーザースキャナーやドローン、BIMの活用に注力することを決断。産業プラントや公共インフラなどで各種3Ⅾ計測サービスを提供し、潜在的なDXニーズの獲得を進めている。顧客には、ミリ単位の精度にこだわる設計用の3D化と、早期に概要の把握を必要とする管理用の2つのパターンに分かれることが多く、大浦工測では相手の状況を勘案したスムーズな応対を実施。3Ⅾ計測の次に待ち受けるフェーズは、3Dの点群データをBIM化する「SCAN to BIM」ということも理解しており、建設現場での生産性向上について思索する日々を送っている。

10年以上前に「実家に戻りたいから退職したい」と申し出た社員に対して、大浦社長は「その地区に支店を創設するから、うちで働き続けてほしい」と提案。現地での支店運営などの権限を与えた所、想像以上の広がりのあった現実を見て、「もう従来の転勤の繰り返しという働き方では、通用しない時代に突入した」と悟り、社員に合わせた労働環境を整備したという。「コロナ以前から多様な働き方を推進してきた点、またいち早く最新のテクノロジーを現場に定着させてきた点を考慮すると、同業他社よりは一歩リードしているのでは?」との問いに、「労働人口が減り続けている中、そのような認識は皆無。むしろ業種を問わず、様々な企業と協力しなければ生き残れない領域に入ったと感じている」と切迫した業界の現況を分析する。実際に現場で元請会社との関係構築も進めており、志が同じ仲間たちと共同で学生の就職支援に関するイベントに携わるなど、業界の課題解決に向けた活動も開始した。


既に大浦工測では、3Dの点群データのモデリングなどをベトナム企業にアウトソーシングしニーズ拡大に対応している。東南アジアの人々と触れ合うにつれて、頻繁に「この熱量を、どうしたら日本に取り込めるかを考えるようになった」と大浦社長は語る。ベトナムでは、予想以上に多能工化が進んでおり、システム化された工法を採用する建築物が多かった。人口減少に歯止めのかからない日本で、このような様式をバランス良く取り入れられるかなど悩む時間が増えているようだ。「当社の理念は、『正しく測る』ことを通じて社会の安全と喜び、産業の発展に貢献していくこと。不透明な状況が続いているが、今後も技術に強いこだわりを持ち、社会のインフラを支える屋台骨としての役割を果たしていきたい」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。