クラフトバンク総研

本社移転のピア東海。「補修・補強」主軸の経営を継続  

更新日:2025/4/25

ピア東海(静岡市葵区)が、2024年9月25日に本社を移転した。それまで製茶問屋だった工場兼事務所を社員に働きやすく、心地良い空間になるようリノベーションを実施。末長政行社長は、「社員増加に伴い、前社屋が手狭になり始めており、働きにくいと感じる社員も出ると考え、事務所移設とリニューアルを決めた」と経緯を話す。「県道沿いにある新社屋を見て、1人でも多くの方が当社に興味を持って頂けることも考慮した」との胸の内も明かし、採用強化にも意欲を示している。

父がピア東海を創業した約40年前から、道路構造物の補修・補強の専門工事業者として、橋梁やトンネルなどの長寿命化に携わってきた。しかし、末長社長は「当時は新設が主流であり、メンテナンス需要は少ない状況にあった」と語る。確かに高度経済成長に合わせ、多くの道路などの構造物が新しく建設され続けていた時代。その影響もあったのか、末長社長も新卒で橋・道路などを新設する企業に入社し、全国を飛び回る道を選択。各地で着実な経験を積み、ピア東海への入社を意識し始めた頃には、時代が徐々に保守・保全の重要性に気付き始め、39歳で社長に就任した時期には「メンテナンスが無視できない存在に変化していた」と振り返る。その後、細かくはあるが確実に生まれるリニューアルのニーズを取り込み、堅実な業績アップに成功。経営の多角化を試みる2代目の同業者が増える中、「当社は、構造物の補修・補強だけに取り掛かる」と固い決意を堅持し、売り上げの倍増を実現している。

社内には、77歳になるベテラン技術職も在籍しており、若手のメンター的な存在として、技能伝承から精神的なケアまで貴重な役割を果たしている。「最近ではホームページから中途入社に至るなど採用面も順調に進んでいるが、企業永続を考えると更に強化する必要性を感じている」と本音を話す。会社の成長を担うのは、言うまでもなく「人」。現在は、新卒採用も検討するようになり、「人間的な部分さえしっかりしていれば、当社が培った知見を伝授することは出来るはずだ」と見立てている。特に他業種から斬新なアイデアを提供してほしいとの思いは強く、「従来にない発想こそ、会社を飛躍させる原動力になる」と強調する。経営理念は「インフラ構造物のメンテナンスを通して、安心して暮らせる社会づくりに貢献すること」。今後も末長社長は、「静岡での補修工事はピア東海」という評判が定着するよう、会社全体で技術・信頼の研鑽を継続していく。

関連記事:特集・Diamond 『新社屋「ピア東海事務所」 ピア東海

新着記事

  • 2025.06.04

    技術継承の橋渡し役を担う 日本多能工協会

     2023年8月4日に日本多能工協会が設立された。代表理事を務める人物は、結城伸太郎氏(ゆうき総業・代表取締役)。20歳の時に刷毛一本で独立し、職人不足の中でも若手育成に励み、地道な活動を経て現在地に辿り着いた経緯がある […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦