「主役は社員」のテクノミツボシが、独自経営を加速化へ
更新日:2025/3/24
テクノミツボシ(滋賀県甲賀市)の谷口学社長は、2007年に4代目の代表に就任以降、社内の風通しを良くするため、社員が率直な意見が言い合える環境の整備を手掛けてきた。真っ先に実施したことは、社長室を全面的に開放したこと。それまで会社を率いていた義理の父でもある先代の社長が、実直かつ一徹な傾向が強かったため、会社では給与の交渉や些細な相談ができる体制ではなかった。これを受け「自分がトップに立った時は、この状況を変えよう」と決意。現実と向き合い、相互理解を前提とした姿勢を開示すると、次第に社員からも本音が垣間見られるようになり、「徐々にだが社内の風土を変え始められた」と胸を張る。


業界全体で人材不足が深刻化する中、2023年1月から現場管理や職人などの中途採用を本格化した。当初は応募がゼロと悲惨な状況だった。しかし、現在はリファラルも含め、飲食・看護など異業種からの参入も増えている。特に谷口社長の「職場の雰囲気が悪くなる前に、新しい仲間を迎え入れよう。人間だったらOK!」という特有の考えが、多くの社員に突き刺さり、定期的に社員が推薦に来る嬉しい状況を生み出せている。「企業の競争力を高める鍵は、社員を最重視して成長のサポートに徹すること。社員を『人財』と念頭に置いて育成することで、将来的には会社の財産に変貌すると信じている」と確固たる信念を述べる。中小企業の強みは、家族のようなチームワーク。この原理原則に基づき、谷口社長が地道に続けてきた努力が、今まさに実を結ぼうとしている。


電気・管・土木工事など、設備に関するプロフェッショナル集団として名を馳せるテクノミツボシは、「常に研鑽を重ねた技術で社会に貢献し、地域に必要とされる企業を目指すこと」を経営理念に掲げる。これを実現するための必須事項を聞くと、「やはり社員の幸せを追求しながら、利益を生み出していくことだ」と即答する。昨今の建設業界を取り巻く環境は厳しく、景気に左右されるケースも多い。しかし、「『主役は社員』というスタンスは変えない」と並々ならぬ思いを堅持する。既に「人は企業の為に働くのではなく、自らの為に働く」「能ある者の爪を引き出せ、能ある者は自らの爪を隠すな」という概念も全社員に浸透しており、社内は活気に満ち溢れている。谷口社長が揺るぎない覚悟で突き進めた社風変革。一朝一夕では到達できない、この過程にこそ値千金の価値があり、人材確保に注力する企業が参考にすべき点が多いはずだ。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。