RASTAQ施工で安全最優先の環境を提供
更新日:2025/5/2
RASTAQ(福岡県大城市)は、欧米で盛んに活用されているロープアクセス技術を高所看板施工向けに昇華させた「RASTAQ施工」を開発し、事業の主軸としている。工法創始者の中野眞佐志社長は、「どんな現場を受注してもロープと知恵、工夫があれば必ず安全に完工できる」と自信を見せる。足場や高所作業車、縄梯子、ブランコがなくても、異なる支点に接続した2本のロープを用いることで、「空中を縦横無尽に移動でき、自由に両手を動かせる。そして安全で安価、迅速なことが強みだ」と自社で見出した特徴を力説する。

中野社長が「単に施工だけ実施すれば良いという安易な考えには至らなかった」と話す通り、安全管理も徹底しており、安全施工を追求し研究を進めた結果、落下物防護用ネット「グランドパラム」も開発。特許も取得できたことで、落下物・飛散物防止のセーフティネットとして大きな役割を果たし、作業者の安全・安心確保に貢献しているという。


RASTAQでは、本社がある福岡では2チーム、東京オフィスでは1チームが稼働し、日々の現場を駆け回る。この10年で20代の入職者が増加していることも追い風となり、現在は看板関連以外にも、清掃や塗装、外壁調査などの分野でも活躍を見せている。協力業者は20社まで増加。現状では年間300件の案件を請け負う右肩上がりの成績だが、中野社長は「安全第一を命題に掲げている以上、職人の育成や、技術の継承を抜かりなく進めるのは絶対の条件だ」と手堅い方針を口にする。職人が一人前に成長するまでに必要な期間は3年程度。「若手の職人には、ゆっくりと焦らず技術・経験を蓄積してほしい」と自社の概念を丁寧に伝えている点も入社希望者が絶えない要因のようだ。


世間一般の「高所作業=危険」という印象が影響し、創業当初は広告代理店に飛び込み営業を何度繰り返しても「そんな危険な依頼はできない」と門前払いにされることが日常だった。暗中模索の中、縁あって一畳程の看板施工を任されたことを突破口に、受注件数を増やし続けられた。その経緯には、中野社長の気骨溢れる工法への愛着と安全に対する執念が詰まっている。

中野社長は「言うまでもなく、人が集まるところに看板が立つ。それ故に、作業時の最優先事項は『安全』になる」と改めて事業推進の大前提を繰り返す。「危ないというイメージを拭い去れれば、業界のイメージアップだけでなく、入職者の更なる増加が期待できる」と答える視線は常に前を向いている。RASTAQの頭文字は、「Rope access And Sign Technical Association」に、会社理念である3Q(Quality、Quick、Question)のQをプラスしたもの。「ロープアクセスを駆使し、看板技術を有する集団が、素早く高品質に疑問を解決する」。街の至る所でRASTAQ施工が用いられ、看板が掲げられ始める日はそこまで遠い未来ではなさそうだ。
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この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。