「成和建設があってこその街」を実現する経営に着手
更新日:2025/7/14
成和建設(佐賀県唐津市)の水落潤社長は、「父が創業した家業を継ぐ気は全く無かった」と当時の心境を語る。しかし、戸田建設で現場監督を務めていた社会人5年目の時、両親が病に倒れたことで、急遽呼び戻される形で入社。3年後には、29歳の若さで社長に就任した経歴を持つ。社員は、自分より年上のベテランばかり。当初から「息子だから社長になるのだろう」という何となく充満した空気も感じ取っており、「社長と呼ばれることにも抵抗感があった」と振り返る。


社長就任時は、旧民主党が政権を握り、公共事業が大幅な削減が進められていた頃。建設業に対する風当たりは強く、「当時は同業者に気を許せる存在は皆無と勝手に捉え、『周囲とは喧嘩をするもの』と常に気を張っていた」と回想する。社内外で自ら孤高の道を選択していたが、所属する団体での触れ合いなどを通じ、徐々に硬化した気持ちも前向きに変化。持ち前のコミュニケーション能力を発揮する場もでき、仲間も増えていったという。佐賀県建設業協会・青年部では、部長を務めるなど要職も経験。自身は「ただ若いから頼みやすかったのでは?」と謙遜するが、周囲からは「早期から社長を担い続けた、この責任感・安心感は本物」という厚い信頼が寄せられている。


現在は、人材採用に注力すると同時に、社員の定着にも取り組む。企業説明会に積極的に参加することで、地域の若者や経験者からの応募に繋げる他、資格取得の支援や教育体制の確立により、社員が長く勤められる環境の整備を目指している。「どの会社でも同様の課題を抱えているはずだが、技術者が不足する現実が改善すべき点。受験費用の負担や合格者への祝い金制度などを導入することで、他社との差別化を進めていきたい」と展望を話す。最近では、社長自らもSNSを更新し、業務や会社の雰囲気を周知する様子は、社員のモチベーション向上アップに直結しているようだ。


水落社長は、当面の目標を「現状維持」と即答する。「もちろん会社の発展は重要事項だ。しかし、採用が活発化の兆しを見せる一方、退職する社員が存在することも事実。一進一退の状態が続く現実があるからこそ、悪い流れを生み出さない堅実な経営を心掛ける」と冷静に見立てを述べる。「建設業は、完成時に街並みを変えられることに加え、施工現場を地図上にも残せる魅力的な仕事」と醍醐味を語る表情は、生き生きとしており印象的だ。「当社は、地域があってこそ成り立つ建設会社。近年では、リフォームや太陽光発電工事などもスタートさせるなど、地元の方々に住み良い環境を提供できるよう日々努力している。今後も皆さんから『成和建設があってこその街』という認知が広がるよう最善を尽くしていきたい」。
この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。