クラフトバンク総研

ゆうき総業が県内トップに向けた取り組みを加速

更新日:2025/7/3

「現場施工店からでも、山形県でトップになれることを示したい」。

 ゆうき総業(山形県上山市)で常務取締役を務める結城俊輔氏の野望である。兄・結城伸太郎社長が創業した同社の初期メンバーとして会社を支え続け、間もなく15期目のスタートを迎えようとしている。1期目の売り上げは約1億円。今では、その10倍以上の数字を叩き出せている状況を勘案し、「この目標は決して荒唐無稽ではない」と胸を張る。「管理・営業だけに取り掛かる企業ではなく、多くの職人を抱える現体制のままでNo.1を目指す」と独自のこだわりを見せており、今後どのような発展を見せていくか興味が尽きない。

 建設業界内では働き方改革が推進され、「ワークライフバランス」が声高に語られているが、結城常務は「当社では、そのような時代の流れに逆行し『早期に技術を習得したい』と熱望する社員に対しては、猛烈に働ける環境を用意している」と特有のスタイルを示す。会社では例え試験に落ちても、資格取得に要した全ての費用を負担する体制を徹底。難関と言われる様々な一級技能検定試験を突破している社員も多く、多能工として常に次のステージに意識を向けられる職場を構築している。結城常務自身も1級の資格14種を保有。営業を統括する立場でありながら、現在も公共工事の現場代理人を任されるなど、自身の背中を見せることで若手の闘争心に火を付ける役割も担っている。

 近年、頻繁に結城常務の頭をよぎるのは「仮に自分が居なくなっても、この部署は同じように回るのだろうか?」との疑問だという。何度シミュレーションしても明確な答えは出なかった。しかし、「今のメンバーなら、きっと何とかしてくれるはずだ」と信じられるようになってからは、「会社全体が社長に頼る傾向のある現状からも、徐々に脱却を図る必要がある」と考える時間も増えたようだ。社長は2023年に日本多能工協会を設立するなど、既に先を考慮した動きを始めている。結城常務も次を見据える時期に入っているようで、その一挙手一投足から目が離せない。

 結城常務に今後の目標を聞くと、「20年以内を目処に会社を売り上げ100億円にすること」と即答した。ゆうき総業には、他社では考えられないほど数多くの若手職人が集結しており、その全員が組織の底上げに貢献している。「何をやるかではなく、誰とやるか」をコンセプトに地道な採用を続けてきた証。この延長線上に新たな景色が待ち受けているとも見て取れる。「施工店として多くの職人を抱える体制下で、泥臭く突き進める今の会社が堪らなく好き」。結城常務の熱き思いが、社内外にどのように伝播し実を結ぶのか。ゆうき総業の取り組みが、建設業界全体にとっての貴重な成功事例になる可能性は極めて高い。

関連記事:業界リーダーに迫る 『技術継承の橋渡し役を担う 日本多能工協会』

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