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滋賀県電気工事工業組合が、組合永続に向け舵を切る 

更新日:2025/4/30

滋賀県電気工事工業組合の理事長に、鹿野敏夫氏が就任してから15年が経過した。これまでの期間を鹿野理事長は「長いようだが、体感としてはあっという間に過ぎ去った感覚の方が強い」と振り返る。周囲から担がれる形で就くことになった理事長という地位。「不思議と月日が経つほど、『世のため、人のため、組合のため、組合員のため、日本のため』という心境に変わっていき、今もなお一貫した使命感が私を支えている」と力を込める。

理事の頃には、「業界の先行きに光を灯すには、将来を担う若者を育成する機関が必要」と要請し、組織内に滋賀電気技術専門学校を創設した。学校は今期で28期目を迎えており、現在も時代に即した高度な専門知識と技術を伝授。卒業生に「第2種電気工事士」免状を交付する他、希望者には就職の斡旋なども提案している。近々では、入管法の改正について発給できるビザの基準を、現状の幅広い範囲で日本語を駆使できる「N2」から、一定程度の日本語が話せる「N3」に変更するよう国にも働きかけているようだ。これまで鹿野理事長は、社会貢献事業として給付型(返済不要)の奨学金制度も充実化させており、県内では「提案から実現までの実行力がある理事長」として、確固たる信頼を獲得している。

組合として事業を推進する上での重要事項を聞くと、鹿野理事長は「財源を確保すること」と断言する。5年ほど前から組合は、滋賀県を通す形で複数の議員連盟を組成。地場に根差した業者と、中央政府に繋がりを持つ議員の意思疎通を活性化させたことで、太陽光発電事業や特定非営利法人を設立するなど、社会貢献を主軸にした事業を実らせることに成功している。「地域の建設業に携わる団体にとって、1つの組織で達成できることは限られている。まだ課題は残る状況だが、多くの方々と調整を図りながら、理想に向かう過程こそが重要な要素だ」と話す視線は常に前を向いている。既に県内の全市町村や関西電力送配電(大阪市北区)、全国の電気工事工業組合と「災害時における協力協定」などを締結しており、更なる盤石な体制を築けるか注目である。

鹿野理事長に尊敬する人物を聞くと、「上杉鷹山、ウィリアム・スミス・クラーク 、トーマス・エジソン」の名前が挙げられ、特に同じ電気に関わる偉人として「私は、1回も失敗したことがない。1万回電気がつかないことを発見した」という名言を残したエジソンには、この上なく尊敬と共感を抱く。また、米沢藩の藩主であった上杉鷹山の「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」との金言を、「すなわち、成功の反対語は失敗ではなく、成さぬことである」と解釈し、日々の業務推進に全力を尽くしているようだ。

今後の目標は「後継者を見つけること。もちろん、私自身は心身共に気力が漲っているが、組合の永続を見据え、次の世代にバトンを繋ぐことも意識した活動を手掛けたい」と語る姿には並々ならぬ決意が現れている。長く培った知識と経験を基に着実に歩みを進める滋賀県電気工事工業組合。多大な重責を担える後継者の出現を期待し、今後の展開を見守っていきたい。

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