ロープアクセスを憧れの職種に。TCSが仕掛ける次なる一手
更新日:2025/5/2
ロープアクセス工法を手掛けるTCS(東京都練馬区)の米村泰史社長は、現役のプロキックボクサーという顔も持つ。プロデビューした年齢は20歳。プロの格闘家としての活動と並行して、ガラス清掃などのビルメンテナンスにも携わり、個人事業主を経て2020年にTCSを法人化した。

ビルメンテナンスからロープアクセス工法に業務の幅を広げた理由を、米村社長は「会社としての可能性を拡げたかったから」と答える。技術を身に付けることは困難を極める作業だったが、YouTubeなどのSNSを駆使した他、事業を展開する中で知り合えた同業者との情報共有などにより継続を実現。特に4U(東京都清瀬市)の上田雅人社長が代表を務める、ロープワーカーズコミュニティー(RWC)に参画以降は、メンバー同士の状況に合わせて仕事を紹介し合う関係を構築し、「胸を張ってロープアクセスに特化した活動をする覚悟が決まった」と経緯を語る。最近では、会社全体のバランスを見渡した組織運営にも意識が向くようになり、「未経験者でも自社で職人を育成する重要性を痛感し始めている」と本音を語る姿も印象的である。



TCSは現在、ロープアクセス工法だけでなく、足場など外装工事の際に必要となる全てに対応できるよう準備を進めている。「会社が4期目に入り、お客さまとの関係が深まり始めたからこそ、『次は足場でお願いできない?』など具体的な提案を受けることが増えてきた。当社では、あらゆるお客さまの要望に応えられるよう、日々新たな可能性を追求していきたい」と意気込みを述べる。ロープアクセスのエキスパートを自負するが、顧客が「施工後の様子を自分の目で確認したい」との声には、真摯に応対するという徹底した姿勢。これまでにない選択肢が加わった時、TCSが次のステージを迎えるタイミングとなる見通しは極めて高い。


米村社長には、「ロープアクセス工法を稼げる業種に変え、建設業界全体を盛り上げたい」という強い思いがある。この願望を達成するには、「まずは当社自体が楽しみながら、安定的な利益を出せる会社になることを目指す」と当面の目標を語る。20歳を迎えたばかりの社員が在籍するなど、社内は若く活気に溢れている。現状では、まだ他工種よりロープアクセス関連の施工に就く絶対数は少ないが、それ故に同業者同士の結束力は固いというメリットもある。「ロープアクセスを憧れの対象となる分野にする」。ロープアクセスの普及度合いと、米村社長の目論む世界観の実現性は相関性があるはずで、今後のチェックポイントの1つになるはずだ。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。