クラフトバンク総研

100年企業に向けた取り組みを開始へ 天龍造園建設

更新日:2025/4/18

 天龍造園建設(静岡県浜松市)は、2024年問題の「労働時間削減」に関する対策を開始した。具体的には、「現場監督でなければ出来ない仕事以外は、他の人に任せてみる」という試み。担当となる社員を採用し、撮影した写真整理や安全書類データの取りまとめ、役所への資料提出や施工体制台帳の記述など、監督自身でなくても行える業務は、別の人が担うことで負担を軽減している。

 塩崎敏裕社長は、「監督の仕事とは、現場に立って測量を行い、丁張をかけ、協力会社との打ち合わせ後に指示を出し、最後に確認を終えること」と本来の役割を述べる。働き方改革に対応するには、「これまで現場業務後に監督自身が受け持ってきた事務作業を、他の人が補える仕組みを作れば、工数削減に繋がると考えた」と経緯を示す。社員には、1日の仕事を「to do it」で細かく分けてから仕事に取り組むタイプが多かった。このような現状を勘案し「全てを自分で抱え込むのではなく、コア業務以外は他者に任せる努力をしよう」と新たな取り組みを始めた。まだ手探りの段階で慣れない部分もあるが、社員の感触は概ね良好で、この継続が型として確立するか注目である。

 塩崎社長は、新卒で天龍造園建設に入社し、2022年に代表取締役に就任した経歴を持つ。東京支店長時代は、周囲に緑があることが当たり前だった浜松と違い、「『道路には街路樹が必要』『グリーンはインフラの需要な要素』という認識で迎え入れて下さる東京での仕事は大変勉強になった」と振り返る。ビルが並び立つ首都圏では、公園などの緑は貴重なもの。この価値ある資源をどのように活かせるか。発注者側も1つの案件と真摯に向き合う姿を目の当たりにできたことで、「当社の仕事は『替えの利かないものだ』と、プライドの構築になる重要な体験ができた」とエピソードを話す。「造園は施工後の成果物を地上で示すことができ、人々の心・記憶に『ゆとり』も提供できる画期的な存在」と語る姿は自信に溢れており、誇りを持ちながら歩みを続けてきたことが理解できる。

 社内の細かな方針の設定や指示などは、「全て信頼を寄せる役員に任せている」としつつも、「もっと全社員が『天龍造園建設に勤めている』と、胸を張って宣言できる会社に変えていきたい」と本音を垣間見せる。今以上に確固たるビジョンを持ちながら仕事に取り組むことで、各自の成長度合いは格段に変わり、それは会社の発展に直結するはずという見立てである。天龍造園建設の最大の強みは、「社員全員が物事をきちんと考え判断し、顧客の要望に応えていく行動力」。会社の大部分は20~30代が占めるようになり、100年企業になることも視野に入れ始めることができた。緑を通じて広く社会に貢献し続ける先には、どのような光景が待ち受けているのか。塩崎社長が今後下していく決断に興味が尽きない。

関連記事:業界リーダーに迫る 『転換期を一致団結で乗り切る 静岡県造園緑化協会 』

新着記事

  • 2025.06.04

    技術継承の橋渡し役を担う 日本多能工協会

     2023年8月4日に日本多能工協会が設立された。代表理事を務める人物は、結城伸太郎氏(ゆうき総業・代表取締役)。20歳の時に刷毛一本で独立し、職人不足の中でも若手育成に励み、地道な活動を経て現在地に辿り着いた経緯がある […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.05.30

    久志本組が200年企業に向けた取り組みをスタート

     久志本組(三重県四日市市)の清水良保社長は、日頃から社員に「地域の方から頼られた時に『嬉しい』と素朴に感じられる人であってほしい」と伝えている。会社は、創業から120年以上の歴史を四日市市に刻み続けてきた。シンプルでオ […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2025.05.27

    ショールーム開設のハマニ。左官技術の伝承に全力を尽くす

    「とにかく職人の採用・育成の改革が急務だと感じた」。  左官・土木工事を手掛けるハマニ(静岡県浜松市)の河合滋社長は、慣習として続けてきた「見て学ぶ」「技術を盗んで覚える」という従来の職人文化に限界を感じ、体制の移行を決 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.05.23

    「誰かの笑顔のために」、三瓶工業がDX駆使で新たなステージへ

     ㈱三瓶工業(山形県天童市)は2022年、設立50周年を記念して会社のロゴや制服、ヘルメットなどのデザインを刷新した。アイデア作りからデザイン製作までを一括で依頼した先は東北芸術工科大学。地元の芸大生との連携により、これ […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦