DX加速の渡邊工業が、時代に合わせた経営を志向
更新日:2026/2/5
渡邊工業(静岡県裾野市)が社内DXを加速化している。アナログ主流で進めてきた書類の電子化を図り、外部ツールを導入した他、自社でもアプリの制作に取り掛かる。渡邊裕介社長は「これまで日報や経費などを紙ベースで記載していたが、電子化を実現したことで大幅な負担の軽減ができた。現場のちょっとした不便を解消するなら内製したほうが早く、使い勝手も良い」と確かな手応えを口にする。開発を担うのは、IT専門職ではない総務の若手社員という現実も驚きである。ノーコードツールを駆使し、現場の声を即座に形にする。完全ペーパーレスを目指してシステム開発を始めてから約2年。当初社内では戸惑いも多かったが、現在は「こういう機能が欲しい」や「ここを改善できないか」など、日々アイデアが飛び交うよう変化したという。

渡邊社長は「建設業のイメージを変えたい」とデジタルだけでなく、様々な社内改革を進めている。創業100周年を迎えた2024年には、フルオーダー制のユニフォームを導入。デザインやシルエットにも特別なこだわりを見せており、作業着特有の野暮な雰囲気を払拭。猛暑対策として薄手の高機能生地も採用するなど、働く社員の快適性を突き詰めた形となっている。常態化していた長時間労働にもメスを入れ、以前は土曜出勤が前提となっていた就業規則を段階的に見直し、数年かけて完全週休二日制に移行させた実績を持つ。「昔ながらの建設会社」から現代的でスマートな企業へ。その変化は、確実に社内全体の空気を変えるまでの影響を与えている。

直近の重点テーマを渡邊社長は「担い手確保」に設定しているが、「採用活動にはまだ本腰を入れられていない」と本音を漏らす。「求人を強化する前に、若者が入りたいと思える環境の整備を優先すべきだ。採用だけの注力は根本的な解決に繋がらない」と分析。待遇や働きやすさなどを改善した後、担い手の確保に集中する意向を示している。社内のDX化を推進し、無駄な残業を削減する。その上で効率化と利益率向上を実現することで、給与・休暇として社員に還元する。この好循環を生み出すことが最優先と明示したことで、改革の結果も徐々に出て初めており、「最近は活躍する若手社員の姿が目立っている」と話す表情には隠しようのない喜びが溢れている。

30代の若さで社長に就任してから1年が経過した。平均年齢が50歳に迫り、ベテランの役員も在籍する中で、デジタル化や意識改革を推進するのは容易ではない。「従来の方式を変えることへの抵抗は少なくない」と苦笑いするが、渡邊社長が止まる気配はない。「一足飛びに物事は進まない。まずは小さなことから、社内のルール変更や新技術の導入など、時代に合わせた組織に変革を続ける」と強い意志を見せる。その根幹にあるのは、「ものづくりを通じて誰もが豊かに暮らせるサステナブルな地域社会をつくる」という100年企業としての強い信念だ。老舗の看板を守りながら、次世代の建設業を模索する渡邊社長。その改革の延長線上に、どのような新しい景色が広がっていくのか。興味は尽きない。
Instagram: https://www.instagram.com/watako1924/
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








