中東情勢悪化の建設業界への影響20260408
更新日:2026/4/8
中東情勢悪化の建設業界への影響を2026年4月7日時点の情報に基づきまとめます(情勢の急変により前提が変わる可能性もあります)。
結論は以下4点です。
①欠品:日本に石油が入って来ることと、中小企業に建材が入って来るかは別の問題
日本に石油が入ってきても、医療等が優先され、かつ販売先は絞られる
②値上げ:中東情勢悪化前から決まっていたものに加え、今回の緊急値上げが二重にヒット
③倒産:中東情勢悪化前から増収増益企業が増えながら倒産廃業が増加する二極化が進んでいたが、今回の情勢変化でますます二極化が進み、特に新築戸建住宅関連の会社は大きく影響を受ける
④対策
・政府系金融機関の融資(手元にお金を持っておくのが一番)
・保険の見直しによる固定費の抑制
・取引先、案件の選別とエリア拡大

①欠品
2026年4月3日時点の三菱UFJ銀行「ホルムズ海峡の事実上封鎖と世界経済への影響」を見てみます。

上場企業の株価ベースですが、株式市場の反応を見ますと、戦争に無関係の日本、インドネシア、韓国などのアジア諸国の株価が下がっています。理不尽ですが、これらアジアの国は中東から多く石油を仕入れているためです。
日本の火力発電はLNG(液化天然ガス)がメインで、中東依存度も低いため韓国などよりも電力への影響は少なくなっています。これは従前からリスクヘッジを進めていた日本の凄さと言えます。そうなると「材料、燃料としての石油」の不足が経済に与える影響が重要になります。
東証株価指数の値動きを見ますと医薬などの影響が少ない一方、建設、不動産の株価は大きく下がっています。政府方針を見ても医療や食糧生産を優先する方針です。
4/8、米国とイランが停戦見込み、中東以外からの代替調達が進むなどの明るい兆しもあるものの「日本に石油が入ってきてもそれが建材に回るかは別」です。
また、私の元には
・「安いところをとにかく探して適当に買ってきた会社」には渡さず、
商売の信義を守って継続取引してくれていた先に優先して商品を渡している
・たとえ大手でもこれまで価格交渉に応じなかった先には積極的に売っていない
・信義則を守っている会社でも、新参者で与信が厳しいところなどはどうしても
回せない
といったメーカーの声が寄せられています。「建材が生産されてもあなたの会社に届くかは別」なのです。
②値上げ
以下に主要メーカーの値上げリストを整理しました。

重要な論点として2025年11月、今回の中東情勢を受ける前からLIXILなどのメーカーはこの4月に物流費などの高騰を理由に値上げの方針を出していました。
そこに今回の情勢を受け、2026年3月末に一斉に各メーカーが値上げを「緊急で乗っけた」状況にあるのです。
上記以外のメーカーの値上げ状況
③倒産
こちらの2026年初時点の建設業界動向予測で触れている通り、2025年の建設業界は増収増益増と倒産廃業増が同時に起こる二極化が加速しています。特に負債規模5,000万円未満の零細企業の倒産が増えています。
また、工種別に見ると塗装、とび、防水、解体の苦戦の他、木造建築(工務店)が苦しくなるだろうと予測されています。
これは2026年初の情報であり、今回の中東情勢を受け、建材を仕入れられる会社と仕入れられない会社に強烈な二極化が進むと予測されます。特に影響を受けるのは石油製品に依存する塗装、防水、舗装でしょう。
2025年度、塗装工事業の倒産が23年ぶり高水準になったと報じられています。
今回の資材高に加え、人手不足、社会保険料、税金の滞納で事業停止に追い込まれる建設業も増えています。例えば官公庁案件や大手の発注条件として「社保の滞納が無いこと」が条件になることも多く、社保滞納→受注資格を失うケースもあるようです。https://www.tdb.co.jp/report/economic/260407-tax25fy
建設業は完工高1億円を下回ると利益率が下がります。売上に占める住宅比率が高まっても苦しくなります。
以下の図の通り、この1億円水準を割りやすいのは造園、塗装、左官、大工の四工種。もともと脆弱な中に資材高がヒットするのが塗装なのです。

建設業にはtoC:戸建住宅やマンション、toB:公共土木や工場などの民間非住宅の大きく二つの領域があります。
今回の情勢はtoCによりマイナスに働きます。新設住宅着工戸数に目を向けると2026年2月時点で前年同月比▲5%、4ヶ月連続減となっています。まだ2026年3月の情報はありませんが、恐らく減少が見込まれます。
これだけ情勢が不透明な中で住宅を買うのを様子見する人が増えるためです。
先述の塗装でも、橋梁や鉄塔塗装などの非住宅塗装は業績好調な会社も多いと聞きます。
他方でtoB、公共工事に関しては政府より価格交渉に応じる旨の通達が各自治体に出ていますので、相対的に価格交渉はしやすいです。既にマンション、戸建住宅などの住宅領域から撤退している弊社のお客様も多いです。
ただ、今回の資材高を踏まえ、デベロッパー各社は新築から改修にシフトしていくはずです。そのため、新築に依存する鉄筋や型枠は徐々に影響を受け、電気などの設備系は受けにくいと私は予測しています。
④対策
・まずは手元資金を確保する(手元にお金がある方が強い)
政府系金融機関による貸付情報が公開されています。
・保険の見直し
解体、とびの他、車両が多い工事会社にとって工事保険は地味に固定費として重いです。
実は古い保険商品を選んでいるせいで保険料が割高になっている場合もあります。
弊社では工事保険に特化した代理店とも提携しています。
ぜひ、建設業の未払いと資金繰りの解説動画をご覧ください。
・取引先、案件の選別、エリア拡大
優勝劣敗、二極化が明確になる局面では「取引先別利益」「案件別利益」を見ながら
優先度を見直すことが不可欠です。「弱い元請けを切る」判断が重要です。
「どんぶり勘定」の会社はインフレ下では苦しくなります。
もちろん取引先、エリアが拡大していないと上記の「元請けを切る」判断は難しいです。
建設業、特に土木、とび、管などの置場が必要な工種は「地価の安い市」に密集し、仕事が多いところに集まらない特性があります。また製造業が強い地域には建設会社は少ない傾向にあります。結果、少ない市の予算に何社も入札する現象が起きます。
そのため「地元で群れる」のを辞め、常に隣町に広げていく営業力が不可欠になります。
職人酒場®で取引先を拡大することをおすすめします。
最後に:
私の父が経営していた塗装会社も2007年の3月に倒産しています。
その際の経験も正直に動画にまとめています。倒産するとどうなるのか、最悪の事態を避けるにはどうすればよいのか、今はそう言った知識も必要だと考えています。
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 所長 / 認定事業再生士(CTP) 髙木 健次
京都大学卒。事業再生ファンドのファンドマネージャーとして計12年、建設・製造業、東日本大震災の被害を受けた企業などの再生に従事。2019年、建設業界の経営に役立つデータ、事例などをわかりやすく発信する民間研究所兼オウンドメディア「クラフトバンク総研」を立ち上げ、所長に就任。テレビの報道番組の監修・解説、メディアへの寄稿、ゼネコン安全大会、業界団体等での講演などに従事。著書「建設ビジネス」。国土交通省「第4回今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」臨時委員。
・YouTube出演
「石男くんの建設チャンネル(@construction-Youtuber)」にて多数出演






