広島県左官業協同組合
更新日:2026/4/17
【技量の証明をサポート】
広島県左官業協同組合は、職人の技能向上と地位向上に正面から向き合い続けてきた。その先頭で旗振り役を担うのが、若槻一浩理事長(若槻工業・代表取締役会長)である。現場で培った実践知と、業界全体を俯瞰する視座。その両輪を武器に、団体の舵を取ってきた。「左官の世界において、国家資格は肩書きではなく技量の証明に当たる」と話す通り、資格取得のサポートは組合活動の中核を成す。とりわけ1級技能士試験に向けた支援は手厚い技能向上策として機能しており、本試験前には希望者を募り、2日間の実技講習を実施。指導者が寄り添いながら、工程ごとの評価基準や要点を踏まえた実践的な指導を行う。「資格取得は決してゴールではない。現場で力を発揮できてこそ意味がある」。挑戦するための入口を整え、努力を正しい方向に導く。その姿勢が、組合の活動を貫く主軸となっている。


【入職のきっかけを創出】
若手の育成も、業界の将来を左右する重要なテーマとなっている。組合では工業高校を対象に出前授業を行い、左官業への理解促進と3級技能士資格の取得を後押しする。座学と実技を組み合わせ、半日かけて生徒と向き合う。担当委員が現場の実情を交えながら指導し、対話を重ねることで仕事の実像を伝えている。若槻理事長は「人は知らない仕事に興味を持つことは難しい。触れてみて初めて選択肢になり得る」との持論を基に、様々な機会を創出することで、徐々に入職者を増やしている。進路選択の早い段階で実体験を提供すること。その積み重ねが、次世代の担い手を育てると確信を持っている。実際に若槻理事長は、家業を継ぐことを早くから自覚し、中学時代から職人の世界を体感してきた。大学では建築を専攻し、新卒入社後は現場で修行を重ねながら経営も学んだ。先代の体調不良を機に35歳で社長に就任。バブル期の多忙さと、その崩壊後の厳しさの双方を経験しながら、事業を立て直してきた実績を持つ。現在は実弟に社長職を託し、自身は会長として家業を支える立場にある。現場を率いる者を尊重し、過度に口は出すことは控える数スタンスを堅持。経営者としてバランスの取れた距離感を意識する姿は既に円熟の域に達しているようだ。


【個の努力を組織の力に昇華する】
若槻理事長は、職人の地位向上を実現するため、組合として標準施工積算資料を作成し積算単価の引き上げ推奨にも注力している。自社では元請けと交渉を重ねることで、適正な単価への引き上げを実施してきた。その実体験を、隠すことなく組合内で共有することを心掛けている。「一社だけが改善しても、業界全体は変わらない」。交渉の入り方、論理的な根拠の示し方、合意形成までの流れを知見として蓄積し、再現可能な形で伝承する。安く買い叩かれがちな構造を変え、正当な仕事として評価されるには、個としての努力を組織の力に昇華する必要がある。「技術を磨き、価値を示し、対価として返す仕組みを作る。この循環を業界全体に広げたい」と言い切るその言葉に、組合活動の本質が集約されている。

【左官という仕事を誇りに】
若槻理事長は「広島県の専門工事団体として積み重ねてきた取り組みを、業界全体を牽引する力に変えていきたい」と展望を語る。その思いは形となり、今年初めて地域の工業高校の学園祭に出展した。現場では建築関係だけでなく、機械や自動車系の生徒、親子連れなどにも左官の魅力を伝えることができ、広い意味で「ものづくりは素晴らしい」という理念を周知できたようだ。作業工程の紹介や実演は大きな反響を呼び、業種の枠組みを超えて人々の関心を集めることに成功した。こうした成功例を「実績」として示し、「広島を起点に全国へ広げることができれば、業界の改善・改良に貢献できるはず」と前向きな姿勢を示す。建設業を是正するための重要な責務。「最適な左官仕上げを届けることで、住環境を整備する」。歴史ある左官という仕事を誇りに、若槻理事長の挑戦は続いていく。


若槻工業のホームページ:https://wakatsukikogyo.com/
この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。







