日本林業土木連合協会
更新日:2026/4/30
【新会長に就任】
今年2月に開催された日本林業土木連合協会の定時総会で、嶋﨑勝昭氏(晃立・代表取締役)が第20代会長に就任した。嶋﨑会長は、これまで2009年から14年間に渡り全国森林土木建設業協会の会長を務め上げるなど、様々な分野で多くの実績も残しており、その手腕に大きな期待が寄せられている。父である千年氏も第15代会長を務めており、約30年の時を経て、親子二代で同じ団体の舵取りを担うことになった。「全国森林土木建設業協会での経験と、父から受け継いできた魂を融合させ、この困難な時代に立ち向かいたい」と固い決意を見せる。伝統の継承と組織の刷新を、どのような過程を踏んで実現していくか注目である。


【木材自給率向上への転換】
戦後復興と歩んできた林業土木の歴史。1950〜60年代の最盛期には、山間部に多くの建設会社が拠点を構えていた。しかし、70年代を迎えると外材流入により施工会社は減少の一途を辿り、木材自給率は10%台まで低迷。近年では国を挙げて国産材の利用促進や、高層木造建築に関する最新技術を用いることで、ようやく40%台まで回復する状況に押し戻すことができた。嶋﨑会長は「木材の自給率を上げることは、安全保障の観点からも極めて重要だ。山林が荒れることになれば、保水機能が失われ現地では災害の発生に直結する。林業が円滑に活動できるよう、団体としては林道を整備し、崩れた山を直す守り手として地域を支える必要がある」と林業土木の意義を強調する。

【適正な利益構造への変革を目指す】
業界の持続的な発展には、適正な利益を確保できる産業構造への改革が不可欠だ。昨今の資材価格高騰や人件費上昇が現場を圧迫させている状況に対し、嶋﨑会長は「公共事業予算が横ばいでは、実質的な事業量が目減りするのは当然の成り行き。このまま地域の建設企業が疲弊すれば、山を守る人々が皆無に陥ることを自覚し、対策を打つ必要がある」と危機感を募らせる。近年、巻き起こる集中豪雨や激甚化する台風被害、南海トラフ地震に対する備えの必要性を考慮すれば、山地災害対策は一刻の猶予も許されない。全国の約21万ヶ所に存在する山地災害危険地区を抱える中、嶋﨑会長は「事前防災の徹底」を提唱する。「国有林は、人里離れた場所にあるから被害は少ないという考えは誤りだ。山を守ることは、巡り巡って下流域の住民の命を守ることに直結する」。災害後の復旧作業だけでなく、それ以前の予防を想定した治山対策に予算を重点配分する重要性を説く。


【次世代に繋ぐ「青年交流会」を構想】
団体としては、若手経営者が主体となる「青年交流会」の発足を構想する。現在は一部の地方協会に留まっている青年活動を全国組織として統合し、30~40代の若手が林業土木の未来を熱く語り合える機会を創設することが狙いだ。嶋﨑会長は「次世代を担う若手には、林業土木のプロとして誇りを持ち、自らの手で将来像を描いてほしい」と期待を寄せる。各社の若手が垣根を越えて交流し、日々の悩みを共有できる仕組みを作ることで、離職防止や担い手確保といった業界共通の課題解決を目指す。嶋﨑会長は「若手の柔軟な発想を組織運営に取り入れることが、新たな魅力を創出する原動力になる」と確信している。


【中山間地域の守り手として】
業界共通の課題である担い手の確保に対して、嶋﨑会長は「高校生や大学生の県外流出に歯止めをかけ、この場所で生きていく未来を提示しなければならない。賃金体系や福利厚生の更なる充実だけでなく、ICT・DXを駆使することで過酷な現場環境を改善する必要がある」と訴える。親子二代で受け継がれてきた山への情熱。それを次の世代に繋ぐ挑戦が、今まさに本格始動した。林業土木の誇りを堅持しつつ、業界をアップデートする嶋﨑会長の歩みは、若者がこの地で生きるための「希望の架け橋」となっていくはずだ。山と共に歩むその実直な姿勢は、次なる半世紀を支える礎となるに違いない。

この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本 雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








