熊本県鉄筋工事業協同組合
更新日:2026/5/7
【団結力の熊本】
熊本県鉄筋工事業協同組合の宮田洋志氏(宮田鉄筋工業・代表取締役)が、昨年11月に「黄綬褒章」を受章した。宮田理事長は、「身に余る光栄だが、過渡期にある建設業界には課題も多い。これからは喫緊にやるべきことを選定し全力を尽くしたい」と意向を示す。理事長に就任したのは3年前。「順番が回ってきただけ」と謙遜するが、その足跡を辿れば、誰よりも協会に寄り添ってきた人物であることが理解できる。1992年の組合設立直後から、九州他県に先駆けた青年部の立ち上げに奔走。当初は存続すら危ぶまれていたが、粘り強く組織を軌道に乗せた経験が、現在の「団結力の熊本」とも称賛される強固なネットワークを構築した。「青年部時代に仲間と磨き上げた『横の絆』が最大の財産。信頼できる仲間と共に、次の世代が誇りを持てる業界にアップデートしていく」と並々ならぬ意欲を示している。

【青年部で育んだ絆】
青年部に在籍中に、宮田理事長は崇城大学との連携による鉄筋工事施工計画・実施要領書の作成に携わった。約1年に渡る勉強会を牽引し、膝を突き合わせた議論と懇親の場を幾度も繰り返したことで、ライバル企業の垣根を越えた強固な関係性を作り上げた。「若手時代に夜を徹して語り合った仲間たちが、今では一緒に組合を支える中核のメンバーとなっている。成果物以上に、そこで醸成された相互信頼が心の糧だ」と述懐する。この唯一無二の原体験には、今なお業界共通の難題である「担い手確保」に挑む揺るぎない原動力となっているようだ。

【「かっこいい鉄筋工」を再定義】
年々、深刻化する担い手不足に対し、宮田理事長は「鉄筋工という職業のイメージを根本から刷新する必要がある」と危機感を募らせる。宮田理事長が提唱するのは、ICTやDXを駆使した現場環境の抜本的な改善だ。自社でも専用ソフトを用いた材料算出のデジタル化を推進し、経験の浅い若手でも高精度な施工ができる仕組み作りを急ぐ。「賃金体系や福利厚生の充実化は大前提。その上で、若者が自尊心を持てる『かっこいい鉄筋工』としてのリブランディングが不可欠だ。洗練された作業服の導入など、多角的に魅力を創出していく」と設備面から意識を改革し、専門職としての矜持を醸成することが担い手確保の鍵になると捉えている。

【地に足をつけた経営を】
半導体大手・TSMCの進出に伴い活況に沸く熊本県。周辺のインフラ整備や建設需要が加速する中、宮田理事長は「昨今の好況は喜ばしいが、先行きは決して楽観できない」と冷静なスタンスを堅持する。国際情勢の急変やアメリカの政権動向1つで、計画の再考や延期などの事態は起こり得る。「TSMCが企業として世界情勢を鋭く注視している以上、我々もマクロな視点は欠かせない」と特需に浮かれることなく、業界全体の動向を分析。「一時的な波に翻弄されず、常に数年先を見据えた受注戦略を練るべき」と強調する。激動の時代を歩む組合員に対して、宮田理事長は一貫して地に足をつけた経営の重要性を説き続けている。

【組合を持続的に発展させる】
組織の持続的な発展を期し、宮田理事長は「組合員数の増強」を優先課題に掲げる。現在は23社が加盟。県内には未加盟の事業者も散見されるが、宮田理事長は決して排他的な姿勢を取らず、粘り強い対話を通じて門戸を開き続けている。「個々の企業が抱える苦悩も、組織の知恵を結集すれば必ず解決の糸口は見出せる」と未加盟業者も「競合」ではなく共に業界を支える「同志」として迎え入れる。「組織力の強化は、外国人材の受け入れ体制整備や最新技術の共同導入など、単独企業では限界のある課題解決を可能にする。地域全体で足並みを揃え、適正な価格体系を堅持することが、鉄筋工事の地位向上と、将来にわたる担い手確保を実現するための不磨の布石となる」と話す口調は力強い。鉄筋業界を「誇り高き専門職」に昇華させる宮田理事長の挑戦は、鉄筋の骨組みのように力強く緻密に組み上げられ、日々着実にその強度を増している。


この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本 雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。







