福岡県鉄筋事業協同組合
更新日:2026/5/27
【職人がやり甲斐を持てる業界に】
福岡県鉄筋事業協同組合は、「職人がやり甲斐を持てる業界」をテーマに団体の活動を実施している。副理事長を務める佐々木善弘氏(アイワ技建・代表取締役)は、これを実現するために不可欠な要素を「若者が自らの意志で入職できる環境を整えること」と語る。昨年12月には、建設業法および関連法が改正・完全施行され、建設業界の労務費適正化と取引環境が大幅に改善された。標準労務費の導入や著しく低い見積りの廃止、工期ダンピング対策の強化など、適切な価格転嫁と賃上げを求める、専門工事会社にとって重要な法律が発動した。佐々木副理事長は、「全国鉄筋工事業協会とも連携し、標準見積書とキャリアアップシステム(CCUS)を浸透させることで、これから入職を検討する若手にも明確な収入を明示できるようになった。これは私たちによって千載一遇のチャンスになるので、着実に物事を進めていきたい」と意気込みを示す。

【標準見積書を賃金アップに繋げる】
団体としては昨年7月と11月に、福岡県内にある主要のゼネコンを回り、標準見積書の詳細説明と、今後はこれを基にした見積書を提出する意志を伝えた。国として、法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金を必要経費と捉え、安全衛生経費を内訳明示できるようになった変化を、「地道な活動の効果もあり、ようやく浸透し始めたとは感じている。しかし、希望通りの賃金アップに繋がったかと考えるとまだ疑問は残る」と捉える。「ゼネコンの方々にも『これ以上の単価下落は職人の消滅に繋がる』と解説したことで、ようやく理解を得られる状態になった。この追い風を活かせるよう、一致団結したと組合活動を継続していきたい」と本音を述べる。標準見積書を駆使しなければ、職人に真っ当な給与が支払われず、これが常態化すれば若手が他産業に移るリスクが高まる。難局を迎えていた専門工事業界にとっての一筋の光を、若手入職者の増加に繋げられるか注目である。

【非常時にも備えた経営を目指す】
佐々木副理事長は、新卒でゼネコンに11年ほど勤務後に家業である「アイワ技建」に参画した経緯を持つ。入社以降に迎えた最大の危機はリーマンショック。旧知の仲であった企業の多くが倒産・廃業していく中、自社は「当時の代表が無借金経営を続けてきたこと。また、ある程度のまとまった貯金を残していたので、一時期はそれを吐き出しながら、何とか次の仕事に繋げてきたたことで今がある」と回想する。長い期間、現場作業だけでなく、経営に関しても学び続けた自負はあった。しかし、これまでの知見が非常事態では通用しないケースも起こり得る。社長に就任した2019年以後も、この体験をベースに組織運営を手掛けている。社内体制は、職人を社員として抱える直営部隊を確立しており、何よりも現場を重視する経営手法が特徴である。

【若手の受け皿は組合が作る】
鉄筋工事とは、空港・港湾・駅・高層ビル・上下水道・ダムなど、社会インフラであるコンクリート構造物の躯体工事を担い、最も大切である命を守る重要な仕事である。佐々木副理事長は「実際に手を動かしているのは、私たち専門工事業者である」という確固たるプライドを示す。この仕事に不可欠な高い技術力と強い安全意識を継承するためには、「やはり多くの若い世代が入職する受け皿を私たちが作るしかない」との気持ちを全面に表す。職人が適正な評価と給与を受ける環境を団体が創出すれば、若者を中心にした新規入職者を増やせるはず。少子高齢化が急速に進み、特に人手不足が深刻な課題はある。だが、佐々木副理事長は「それでも組合を軸にした活動を継続することで、鉄筋業界を少しでも改善させる」という明確な覚悟を頂き、今できる最善策に取り組んでいる。


この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。







