大分県左官業組合連合会
更新日:2026/7/29
【連合会の会長として】
堤裕也氏(エンワ・代表取締役)は、2021年6月に大分県左官業組合連合会の会長に就任した。連合会は大分県内8支部の左官業団体を束ねる組織。自身は、議員秘書を務めた後、父からの要請により入職。約10年で代表の座を継承し、自社を経営する傍ら元請企業の協力会会長を歴任した。この間、日本左官業組合連合会・九州ブロック会の青年部長を務めるなど、その実直な人間性を武器に、これまで複数の要職を引き受けてきた。現在は会長として、伝統技術の継承と処遇改善に向け、奮闘する日々を送っている。

【業界全体で若者を育てる】
団体では、職業訓練開発機構と連携して運営する「大分県ものづくりカレッジ」を通じた職人の育成に注力する。これは週に一度、加盟各社の新人が一堂に会し、2年間に渡り実技・座学を体系的に学ぶ仕組みである。これまで堤会長自身も、採用は実現できても離職率が高いという苦い時期を経験した。「自ら体験したからこそ、教育の重要性を痛感している」と語る通り、自社の社員を積極的に通学させ、会員の入校を促している。同校では、河野靖男副会長や小林安則理事も講師を務め、熟練の技を惜しみなく伝承する。時には、ピザ窯作りなど遊び心のある課題も取り入れ、若手が楽しめるよう趣向を凝らしているという。「技能検定2級の学科免除のメリットも大きい。しかし、何よりも会社を越えた『同志』と出会える財産に重きを置いている」と、堤会長は若手職人を支える「心の拠り所」としての意義を強調する。同じ悩みを共有し、共に高め合える仲間の存在。この強固なコミュニティこそが、若手の離職を食い止め、業界を底上げする豊かな土壌となっている。以前は県内の他工種でも同様の取り組みが行われていたが、現在も継続しているのは県内では左官業のみ。このような「業界全体で若者を育てる」という圧倒的な面倒見の良さが大分の左官業界が誇る最大の特長である。


【先に給与体系の確立を実施すべき】
時間外労働の上限規制は、昨今業界を揺るがす懸案事項の1つである。堤会長は「官民一体となって休みを確保する流れは理解できるが、単純に休みを増やすだけでは収入の減少に直結してしまう」と警鐘を鳴らす。家族を養う世代からは「もっと働いて稼ぎたい」という切実な声も上がっており、「休みを増やすことだけが目的な訳ではない。まずは適切な単価を確保し、週休2日でも十分に生活できる給与体系を先に確立すべき。順番が逆だと指摘しておきたい」と提示する。職人の生活実態を無視した改革ではなく、まずは「稼げる環境」を整えること。団体のトップとして、実態に即した待遇改善を訴え続けている。

【「稼げて、誇れる」業界へ】
堤会長は、今後の運営において「会員を減らさず、組合の意義を再定義すること」を掲げている。目指す姿は、組織維持という枠組みを超え、会員が実利を享受できる組織である。「横の繋がりを綿密にして、お互いが助け合える環境を作りたい。忙しい時には応援に駆けつけ、暇になれば仕事を融通し合う。血の通った相互扶助こそが、連合会の本来の役割であるはずだ」と持論を述べる。業界持続の可能性については、「単価を下ることなく、職人の待遇を見直すことが不可欠だ」と主張する。職人の給与向上に目処が立たなければ、若者が入職を希望するはずがない。「まずは職人が安心して生活できる土台を整備すべき」。伝統を守りながらも、革新を恐れない舵取りは一切ブレる様子を見せない。堤会長の団体運営により、大分県の左官業界は「稼げて、誇れる」場所へと着実に進化を遂げようとしている。


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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本 雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








