社員育成力を武器に、上田重設が次なるステージへ
更新日:2025/4/29
上田重設(東京都江戸川区)の上田龍之介社長は、重量鳶の醍醐味を「何トンもの大型設備をミリ単位でぴったりと設置し、周囲から歓声が上がった瞬間」と誇らしげに答える。義理の父が休眠状態にしていた会社を引き継ぐ決意をした時期が2015年。10代から建築金物工事に従事し、実の父が経営する三陽重量工事(東京都江戸川区)で重量物据付工事などの経験を積んでいた矢先、「余命短い妻の父から、『会社を受け継いでほしい』と懇願された現実に運命を感じた」と振り返る。現在は、運搬・据付・解体撤去などのサービスを全国で展開しており、安全を最優先にした施工を徹底している。

上田社長は「1度技術を習得できた人が、引退するまで同じ仕事を全うするケースが多いのが重量鳶の特徴」と話す。上田重設では未経験からの入職者が多く、明確な技術を身に付けるまで複数年を要することも少なくない。しかし、確固たる技能を身に付けた職人は、自身の裁量で生き生きと仕事を進めることができる。その様子を見た若手は「自分もあのように働きたい」と目標にする好循環を社内に生み出せているという。最近では、営業で活躍していたエース社員が、「皆が楽しそうに働いているので、自分も現場に出てみたくなった」と部署異動を希望。短期間で猛烈に働いたことで目を見張る成長を見せ、現在は職長に就任するなど、特異な事例も創出している。上田社長はまだ33歳と若く、会社には熱く前のめりの活気が醸成されているなど、独自の強みが多い点も印象的である。

当面の目標を上田社長は「東京都で1番信頼のある重量鳶業者」に設定。「実現には、今以上に丁寧かつ高品質な施工ができるよう、技術研鑽に努める必要がある」と課題を語る。「重量物据付工事の分野は、特殊技能が故に市場が限られており、やり方次第では十分に可能性がある」と分析する。社内には、未経験からでも1人前に育て上げられる仕組みを構築しており、信頼を勝ち取れば自ずと会社も成長していくと考えている。どのような過程を経て目的を達成していくか大変興味深い。


「20年近く重設工事に携わっているが、全く同じシチュエーションでの施工は皆無で、日を追う毎に新たな発見ができる点が、この仕事の大きな魅力。極めて高い技術職のため、予定していた工事が圧倒的に短い時間で終わることも多く、何よりお客さまから感謝の言葉を頂いた時の喜びは何にも変えられない」と特質を述べる。今年度からは社員採用も強化し、更なる飛躍を遂げるための計画も作り上げた。持前の社員育成力と情熱を武器に、上田重設が次なるステージを迎える姿が待ち遠しい。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。