三陽重量工事が「日本一の重量会社」に向けた活動へ
更新日:2025/4/30
三陽重量工事(東京都江戸川区)の上田幸道社長は、若手の頃に会社から4回逃げ出し、同じ数だけ同社に出戻りをした経験を持つ。「とにかく若い時は腹が座っていなかったので、少しでも理不尽な目に遭うと現実から逃避していた。その間、他の重量鳶や不動産営業なども手掛けたが、どれも中途半端に終始し、当社に舞い戻るという形を繰り返した」と振り返る。社内では「まだ出戻ってきた」と冷ややかな視線を感じたことも多かった。しかし、ゼロからの顧客開拓を量産し、社外で横の繋がりを広げ始めると、徐々に周囲からの評価が変わり始め、確固たる実績を積み上げた結果が認められ、2019年に6代目の社長に就任することができたという。

社長に就いて間もなく、従来のやり方では赤字を垂れ流すだけと、社内改革の断行を決意。売り上げ・利益率を考慮すると経費が膨大過ぎると、車両を削減し駐車場も1つに統合。会社としてスムーズな業務推進を実現するため、それまでの役員に役職を降りるよう説得し、給与の変革に手を出した頃には、「社内で『壊し屋』というレッテルを張られていた」と当時の様子を話す。筆者が「周囲を気にして、自身の決意が揺らぐことはなかったのか?」と聞くと、上田社長は「一度もない」と即答。社長でありながら、営業でも圧倒的な数字を上げていたので、「この状況を利用し、徐々に結果を出す人を評価する組織に変えることができた」とターニングポイントを述べる。現在は、電気・衛生設備の施工に注力。限られた時間内で全ての施工を終わらせる技術力には定評があり、創業当初から大きな事故を一度も起こしていないという現実は、顧客からの絶大な信頼に繋がっている秘訣のようだ。


上田社長が現在掲げる目標は「日本一の重量会社になること」。同じ江戸川区には、実の息子が立ち上げた同業の上田重設も存在し、常日頃から切磋琢磨できる関係を維持。現在も状況次第では、双方でサポートし合う体制を構築しており、「まだ息子に負ける訳にはいかないな」と話す表情からは充実感・幸福感が漂っている。「厳しい環境化での作業が強いられる建設業界だが、アイデアの組み合わせ次第では、突破口はまだ多いと信じている。重量鳶は、特殊技術が故に普段は人が入れない場所で業務ができる魅力的な仕事。今後も『安全』『技術』『誇り』を最優先に考えた事業展開で、お客さまの満足度向上に徹底していきたい」と語る視線は常に一歩先を見据えている。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。