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防災設備が唯一無二の存在へ。矢野防災設備が掲げる地域主体の経営

更新日:2026/5/17

矢野防災設備(三重県四日市市)の矢野陽一社長は、「地域社会への奉仕と誠実な事業展開」を理念に掲げ、力強く組織を牽引する。祖父・政男氏が1959年に創業した同社は、消防設備の設計・施工・販売などを専門的に手掛けている。長年築き上げた信頼を基軸に、自社開発のソフト「楽々点検」や「楽々消防申請」を全国の同業者に展開するなど、独自のビジネスモデルを確立する。

矢野社長が家業に参画したのは約20年前のこと。当時は個人の裁量が大きく強みとなりやすかった反面、業務の属人化という課題を抱えていた。一人の担当者が設計から見積もり、施工提案までをワンストップで担える長所はあった。しかし、それは裏を返せば業務内容がブラックボックス化しやすく、若手が壁にぶつかった際には早期の対処ができない難点でもあった。この点に着目した矢野社長は、レポートラインの再構築を断行。「誰に何を報告・相談すべきか」を明確に定めたことで、若手が安心して技能習得に専念できる環境を創設。無事に組織的なバックアップ体制を整えたことで、社員が積極的なトライ&エラーを繰り返せる職場を作り上げることに成功した。


 現在、最も注力する分野は「言うまでもなく採用」。熟練のベテラン勢が定年退職を迎える時期に差し掛かる中、いかにして長期間かけて培ってきた技術を次の世代に継承していくべきか。「技術を伝えられる人間が居なければ、自社だけではなく業界の損害にも繋がる」と語る言葉には強い危機感が滲む。未来を担う人材を確保するため、同社では昨年から勤怠のデジタル化を含めたDXを加速化。アナログ作業による負担を少しでも軽減することで、社員がよりコア業務に集中できる職場を目指している。


矢野社長が目指すのは、「単なる売り上げ規模の拡大ではなく、地域社会から揺るぎない信頼を積み上げること」。地場に根差した人々から「矢野防災で良かった」と言われるような「安心」を与えられる企業であり続けたいと考える。日頃から「消防点検は単なるルーティンワークではなく、お客さまとの絆を深める貴重な機会」と設定している通り、きめ細かな現場での提案や情報提供は、もはや顧客からは不可欠な存在として組み込まれている。不変の理念である「誠実」を大切にしながら、組織をアップデートし続ける矢野防災設備。この先も街の安全・安心を守り抜き、地域社会にとって「必要な会社」であり続けるはずである。

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