「建設会社」というプライドを胸に、ラックス建設が新たな領域に挑む
更新日:2025/5/2

ラックス建設(広島県福山市)は、統合マネジメントシステムの活用により、地球環境と労働安全衛生に配慮しながら、顧客や社会への貢献を方針に事業展開している。組織を適切に管理統制するシステムとして取得した国際標準規格は、ISO9001(品質マネジメント)とISO14001(環境マネジメント)、ISO45001(労働安全衛生マネジメント)の3種類。建設業で前2者を取得する企業は少ないが存在する。しかし、労働安全衛生や健全な労働環境の構築という面で高い前提認識を持ち、ISO45001を取る会社は極めて稀である。このような組織として早期に対策を取るスタンスが功を奏し、2019年には「広島ピース・スタートアップ・アワード」最優秀賞と、「環境人づくり企業大賞」中小企業区分社内協働部門環境大臣賞を受賞。業界に先駆けて、独自のSDGsコンセプトを打ち出す契機となった。
山田哲矢社長は19歳の時、ナポレオン・ヒルの著作「成功哲学」に感銘を受け起業を決意。21歳で屋根や雨漏りの補修工事を行う「ラックス建設」を創業し、現在は防水・外壁の改修や耐震補強、構造物調査診断など幅広い業務を手掛けている。創業から約10年間は、ゼネコンや工務店などの2次・3次下請けをする日々が続いた。しかし、社会情勢に適応させた組織編制と微調整を繰り返したことが、「請け負う仕事の9割近くが元請けに変化したことに繋がった」と現状を話す。元請けとして、少しでも競合との差別化を図るため、事前に劣化状況や各不具合箇所を調査した後に、現場を提供する配慮も好評で、協力会社からは頻繁に「ラックス建設が担当する現場は、常に段取りがなされていて仕事がしやすい」との声が上がっている。今年の夏には、GoogleマップとAIを併用した屋上・外壁診断システムをリリース予定であり、「BIGな会社よりHEROな会社を目指す」という山田社長が掲げるポリシーの体現化となっている。
これまで主に請負業を推進してきたラックス建設だが、「今後は、自社で中古ビル・マンションを仕入れ、修繕施工後に運用・転売などをワンストップで行えるビジネススキームを整備する」と先を見据える。「当社は、防水・外壁改修工事を行うことで、経営スタイルを確立してきた建設企業だ。まだ課題は多く残る状況だが、引き続きDX導入や新たな可能性の模索を繰り返し、少しでも現場の業務効率化が実現できるよう最善を尽くしていきたい」と述べた。取材中、山田社長からは頻繁に「従業員1人当たりの経常利益」や「小さいチームとしてのKPI」という言葉が出ており、できる限り少人数での生産性向上を徹底していくという姿勢が感じ取れた。「常に改善・改良」を自ら実践してきた山田社長が、建設会社というプライドを胸に新たな領域に踏み込んでいく。ラックス建設がどのような変遷を辿るのか、参考にすべき企業は多いはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。