豚座建設が「3つの健康」を念頭に置いた組織運営に乗り出す
更新日:2025/5/2
豚座建設(高知県四万十市)の佐田憲昭社長は、「『3つの健康』を重視した組織運営を心掛けている』と独自の経営手法を話す。3つとは、「従業員と家族」、「企業」、「地域」。心身共に健康な社員が生き生きと働くことで、地域の利便性を向上させ、その循環が次の仕事を生み出すという理念。地域建設業として公共事業も多く、人を集めるにはまず地元を豊かにして、それを会社の成長に繋げるという真っ当な考えが、同社の躍進を支えている。

現在の役職員数は70名。佐田社長は「徐々に若手社員の割合を増やし、将来的には100人程度に到達させることを意識している」と意気込みを語る。人材確保と育成には特に気を遣っており、SNSの発信も積極的に推進。イベントや事業だけでなく、四万十市の観光名所やグルメなど、地域の魅力をPRする内容は国内外で人気を博しており、「実際に採用が決まるケースも生まれ始めている」と若手増加の秘訣を語る。人口減少時代の中、社員の採用と定着は喫緊の課題。その傾向が顕著な地方都市でも、SNSとアイデアの組み合わせ次第では突破口を見出せる事例となっており、コメント欄には「豚座建設をフォローすれば地元の出来事が分かる」や「四万十市に帰りたくなった」とのコメントが今も残る。「まずは地域に足を運ぶきっかけとして活用してほしい」という社長の意志を、若手社員が見事に具現化した象徴的なエピソードとして周囲に知れ渡っている。


若手強化を図る一方、佐田社長は「結果を出したベテラン社員が報われる体制も構築したい」との見立てを述べる。確かに若手は頑張っている。しかし、「その土壌作りを根気強く続けてくれたのは、間違いなく勤務経験の長い社員たち。彼らも報われるような体制を早期に作り上げたい」と先を見据える。この考えを形にするため、定年後も継続雇用を可能にした。天候不順で工事が延期になった時のモチベーション管理など、ベテランに負担を掛けることが多い分、「彼らが10年後には余力を持って、仕事に臨める環境作りも始めたい」と話す姿勢からは、短期・長期双方の結果を見守るスタンスが垣間見える。


豚座建設は、今年10月に創業75周年を迎える。歴史を積み重ねることができた要因を佐田社長は「各時代の従業員や周囲の支えがあったからこそ、ここまで続くことができた」と断言する。「企業存続の極意は『人』。引き続き当社では、『3つの健康』に重点を置いた経営を手掛けていく」と一貫した主張を続ける表情は穏やかだ。3人目の建設ディレクター誕生が濃厚になるなど、社内には明るい兆候が多い。「地域と共に成長する」と銘打つ、豚座建設が打ち出す次なる一手はどのようなものなのか。地場に根差した建設企業にこそ、生き残りのヒントが隠れている。


この記事を書いた人

クラフトバンク総研 記者 川村 智子
新卒で入社した建設コンサルタントで、農地における経済効果の算定やBCP策定などに従事。
建設業の動向や他社の取り組みなどに興味を持ち、建通新聞社では都庁と23区を担当する。
在籍時は、各行政の特徴や課題に関する情報発信に携わる。2024年よりクラフトバンクに参画。
記者として企画立案や取材執筆などを手掛けている。