クラフトバンク総研

ワークライフ重視の桑形建設が、社員最優先の経営を加速化

更新日:2025/5/2

桑形建設(佐賀県鳥栖市)の桑形勇社長は、会社設立以来「社員の過ごしやすい職場作り」を進めている。「高い技術力と提案力を強みに、創業から11年間順調に売り上げを伸ばしており、現在は増員に向け社員満足度の高い会社を目指している」と展望を述べる。穏やかに話す姿が印象的な桑形社長だが、「俗に言う『パワハラ』の分野に入る厳しい指導を行ってきた過去がある」と本音を語る。

桑形社長は、「就職に当たり、たまたま入職した業種が鳶職だっただけ」と謙遜気味に振り返る。若手時代から持前のセンスと向上心を活かしながら修行を積み、個人事業主として独立してから約2年半で法人化を実現。10人ほどの社員を抱え、「桑形建設」を立ち上げた。技術力には絶対的な自信を持っていたが、その厳格さを従業員にも求め過ぎた故に、社内での孤立を察知。プレッシャーから逃れたいと視線で訴える周囲の反応を自覚し、「誰もが働きやすい環境と各自が目標を持てる職場を確立しよう」と決意した。自分一人で全てを管理するのではなく、社員に役割を分担し、業務を任せていく方針への切り替え。その結果、自身の負担軽減はもちろん、「個々に責任と決定権を持たせることで、会社全体のパフォーマンスの向上に繋がったことを実感できた」と得がたい体験を話す。置かれた状況を客観的に分析し、柔軟に応対しようと心掛けたからこそ、社内の雰囲気を好転させられた。自身のスタイルを変えることは容易ではないが、「実践後に状況を吟味し、軌道修正を繰り返すこと」ができる、桑形社長の人間性が顕著に出たエピソードである。

現在注力している、ホームページのリニューアルやSNSでの投稿は、「全て採用に繋げることを意識している」と率直に述べる。社内や現場だけでなく、地元の風景や観光名所なども盛り込むことで、閲覧者は「何となく雰囲気の良さを感じる」とイメージが喚起できるようだ。近年、社員の働きやすさと生産性向上を積極的に進めており、「2024年問題に対しても特に焦ることはない」と胸を張る。全ては、社員に厳し過ぎたことに気付き、「このままでは行き詰まる!」という危機感から生まれた結果であり、それが社内のワークライフバランス重視に繋げられた経営判断は見事である。

桑形社長は、「私の目標は、社員に長く、心地よく働いてもらうこと」と断言する。会社の根幹には、社員の幸せや健康が不可欠という確固たる理念。佐賀・福岡を中心にした九州一円の鳶土工工事を担う社員は、今日も充実感を持ちながら働くことができている。技術力と提案力、そして機動力を武器にする桑形建設。働き甲斐を感じる社員が増加し、更なる躍進を誓う社内の様子を一日でも早く見てみたい。

Instagramはこちら

新着記事

  • 2025.12.02

    伊田テクノカレッジを基軸に、盤石な体制の構築を志向

    「建設業を何も理解できていない状態で入社したんだ」 埼玉県に本社を置く伊田テクノス(埼玉県東松山市)の楢﨑亘社長が、少し照れながら打ち明ける。大学時代まで剣道に打ち込む毎日を送っていた。「全日本実業団大会で優勝を目指そう […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.11.28

    宮村鉄筋工業が「ものづくりは人づくり」を追求へ

    昨年4月、宮村鉄筋工業(福岡県大牟田市)の代表取締役社長に宮村良太氏が就任した。5年間の正栄工業(大阪府枚方市)での修行後に参画した家業。創業者かつ父でもある宮村博良会長の経営理念である「職人ファースト」を踏襲する形で就 […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2025.11.27

    渡辺建設が「建設業一筋」で未来を築く

    「会社にとってプラスになる仕事は積極的に引き受けている」 渡辺建設(静岡県裾野市)の渡辺正高社長が、2020年に代表に就任して以来、重要視してきた信念である。昨年11月には、常磐大学で一日講師を担当し、企業経営をテーマに […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一
  • 2025.11.26

    東海信和が「人」への投資を重視した戦略を継続

    足場工事を手掛ける東海信和(愛知県名古屋市)は、くさび緊結式足場の可能性を追求している。2026年のアジア競技大会のメイン会場となる瑞穂公園陸上競技場(パロマ瑞穂スタジアム)のリニューアル工事では、これまでの競技場建設で […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一