クラフトバンク総研

「繋がりの連鎖」を求め、滋賀県電気工事工業組合・青年部がバトンを繋ぐ。

更新日:2025/7/1

 滋賀県電気工事工業組合の青年部会長を務める東岸潤一郎氏(協成電気設備・代表取締役)が、6月の総会をもって任期を終える。前任者からの指名を受けたのが2019年。直後に新型コロナウイルスの感染症拡大という未曽有の事態に直面し、活動の制約を大きく受ける中でも与えられた任務を全うすることができた。

 東岸部会長は「コロナ禍では対面での会議・研修が難しくなり、オンライン化や書面決議など、模索を繰り返したことで何とか次に繋げられた」と振り返る。感染症法の分類が5類に移行したことで、本格的に活動を再開すると、組織内からは「支部間の関係性が希薄化している」との声が上がる。この状況を受け、新たな取り組みとして「ミニ技能大会」を発案。個人競技が基本の全国大会において、青年部では支部対抗戦を初めて開催した。企画段階では試行錯誤の連続で、多くの理事と意見を刷り合わせながら本番に向けて準備を重ねた。「日頃は寡黙な職人も当日になると、企業の垣根を越えた真剣勝負に挑んでおり、その姿に大変感銘を受けた。職人魂とは、このような舞台でこそ表れると再認識した。支部間のコミュニケーション活性化にも繋がるなど、効果は計り知れなかった」と手応えを語る。

 自身は、協成電気設備(滋賀県大津市)の三代目・代表取締役を務める。創業者である祖父、2代目で現相談役の父の背中を見て育ってきた経緯を持つ。「父から『継げ』とは言われなかったが、知らないうちに親戚から囲い込まれた印象も受ける」と無邪気に笑う。事業継承は大学に進学した時点で決めており、電気系の学部に進学。卒業後は電線メーカーに就職し、技術職として7年ほど勤務。「社外で積極的な経験を積み、自分なりの視点を持った状態で家業に戻りたかった」と当時の心境を述べる。その後、父の呼び掛けに応える形で現場を担った後、数年後に常務として営業や経営に携わり、2011年に社長に就任した。

 電気工事業は将来性がある一方、若手技術者の確保が難しい側面もある。天候が影響する屋外作業など過酷な面も目立つが、「電気工事は、社会のインフラを支える必要不可欠な仕事。成果として構造物を残せる誇り・達成感は、この仕事でなければ得られない」と端的に魅力を話す。青年部の未来については、若手が楽しく関われる雰囲気づくりが何より大切と考えており、「仲間と気兼ねなく物事を進められる環境こそ、若い世代が入職や組合加入を検討する貴重な契機となる。青年部を、単なる活動の場とするのではなく、『繋がりの連鎖』を生み出せる組織に位置付けてほしい」と次にバトンを引き継ぐ責任者にもエールを送る。任期を終えようとする今、東岸部会長が次に見据える先はどこなのか。「確かな技術力で豊かなライフステージを創り、ビジネスの発展をサポートする」という信念を堅持し、東岸部会長は今後も確かな道を歩んでいくはずだ。

関連記事:業界リーダーに迫る 『滋賀県電気工事工業組合が、組合永続に向け舵を切る 

新着記事

  • 2025.07.29

    上場を追い風に、トヨコ―が更なる飛躍を誓う

    今年3月28日にトヨコ―(静岡県富士市)が、東京証券取引所グロース市場に上場を果たした。新たなイノベーションの浸透は難しく、会社の信頼度は社歴や年商で計る傾向のある建設業界。旧態依然とした閉塞感を打破するには、「IPOを […]
    クラフトバンク総研記者松本雄一
  • 2025.07.25

    新会長就任を機に「未来に続く道を創る」 全国道路標識・標示業協会中部支部静岡県協会

    今年4月、全国道路標識・標示業協会中部支部静岡県協会の会長に海野景司氏(中部ロードテック・代表取締役)が就任した。22~24年度に同協会で実施した静岡県内の区画線剥離状況をAIで把握・数値化する調査が高く評価されたことを […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.07.23

    巧拓が日本足場会を基軸にした成長を誓う

    巧拓(山形県東根市)の荒井幸俊社長は、昨年の夏に日本足場会の理事に就任した。同会は、2022年に立ち上げられた足場施工を主体とする専門工事団体。現在の会員数は64社まで増加しており、会員企業が取り組む先進的な事例を学ぶ機 […]
    クラフトバンク総研記者川村 智子
  • 2025.07.18

    サンダイ技建がSDGsの理念に基づいた活動を加速

    サンダイ技建(愛知県小牧市)が、今年7月で設立25周年を迎えた。加藤鐘三社長が、「地元が好き。だからこそ皆が安心して住めるまちを創造したい」と強い気持ちを込め立ち上げた同社。「交通安全事業に特化したプロフェッショナル集団 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇