全社員が力を発揮できる環境を整備 金子組
更新日:2026/7/28
「全社員が力を発揮できる環境を整える」。

社長に就任した当初の意気込みを振り返るのは、金子組(岡山県倉敷市)の金子太一社長である。会社は創業から60年以上も、日本全国の現場でトンネル坑内の施工を手掛けてきた。4代目の代表として組織の舵取りを担ってから、まもなく1年が経過する。大手ゼネコンで現場修業を積んだ後、家業に戻る決意をした金子社長は、常に「金子組だからこそ実現できること」を心掛けている。最も意識を向けるのは、社長自らが1人ひとりの顔を見て、その働きを正当に評価すること。従業員数は約300人。職人は全員、直接雇用することに特別なこだわりを見せており、「1つのチームとして動けるアットホームな距離感こそが当社最大の魅力だ」と本質を打ち明ける。

現場で職人たちが向き合うのは、山という変化の激しい自然そのものである。地質も条件も、その度に異なる状況下での作業を強いられる。どれだけ困難に直面しても、各元請けが要求する特殊工法をノウハウとして蓄積し、2000年以降に完工した実績は300件以上にのぼるという。


安全面では、労働基準監督署OBを迎え入れ、現場での勘も動員し、法令との間にあるギャップを埋める努力も続ける。「現場で直接吸収した知見はマニュアルでは作れない」。近年、若手でも優秀な結果を残す社員が現れれば、迷うことなく役職に引き上げるスタンスを徹底しており、会社の「山を見極める、確かな技術」というモットーに沿った変革を遂げている。


金子社長には、忘れられない原体験がある。前職のゼネコン時代にトンネルが開通した際、地元住民から「救急車の到着時間が30分早くなって救われた。本当にありがとう!」と伝えられた象徴的なエピソードである。人知れず山を拓く仕事が、誰かの命をサポートできる瞬間に繋がる。「この経験こそが、インフラ屋としての使命感を確固たるものに変え、その火は私の中でも今なお燃え続けている」と熱い気持ちを全面に出す。「トンネル職人という存在を、日本から絶やしてはならない。全ての職人が誇りを抱きながら働ける環境を確立すること」。自身に課したミッションは崇高で、周囲の人々を惹き寄せる引力を併せ持つ。揺るぎない信頼を基軸に、最前線へと道を切り拓く金子組。果敢に挑み続ける挑戦に終わりが見える気配はない。


この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 信夫 惇
建通新聞社に10年間勤務。東京支局・浜松支局・岐阜支局にて、県庁などの各自治体や、建設関連団体、地場ゼネコン、専門工事会社などを担当し、数多くのインタビューや工事に関する取材に携わる。
2024年にクラフトバンクに参画。特集の企画立案や編集、執筆などを手掛けている。








