DX駆使による高度人材の育成に集中へ 東京朝日ビルド
更新日:2026/5/21
「正直戸惑いの方が大きかったが、この経験を糧にすると腹を括ったんだ」
東京朝日ビルド(埼玉県草加市)の広瀬慎吾社長は、微笑みを浮かべながら親会社・竹中工務店から辞令を受けた当時を振り返る。入社以来、現場の最前線を一貫して歩んできた自身にとって、経営参画は未知の領域だった。2024年に代表取締役に就任し、同社が長年築き上げてきた伝統を尊重しながらも、組織変革を大胆に推し進める方針を実践する。

同社の根幹は、前身である「竹中工務店 建設技能工養成所」をルーツに持つ、徹底した教育文化に支えられている。新入社員を1年間かけて育てる独自の育成プログラム「ビルド学校」を展開しており、広瀬社長はこの伝統に対して改革を断行。講師陣をこれまでのOBに加え、現役社員も参画させた。「年齢の近い先輩が教えることで、新人に心理的な壁を与えず、技術習得ができる環境を整えたかった」と経緯を述べる。この応対が功を奏し、現場で若手が育つポジティブな循環が定着したという。内側から磨き上げてきた教育文化は、今や広く社外に波及を見せており、2015年からは全国の工業高校に対して、鉄筋や型枠工事の醍醐味を伝える「出前授業」を開始。広瀬社長自らが、社員と共に全国の教室を駆け巡り、専門工事業の魅力を伝えている。この試みは技術伝承のみに留まらず、昨年訪問した5校から3人の採用に繋げるなど、嬉しい驚きを会社にもたらすことに成功している。


広瀬社長は、2026年度に注力する分野を「DXによる生産性向上」と明言する。鉄筋BIMを導入し、作成した3Dモデルを、納まり検討から実際の施工に直結する「鉄筋組立図」まで、一気通貫で活用することに挑戦する。型枠ではNC加工機を導入し、加工工程で6割の省人化を目指し、浮いたリソースを現場作業に振り分けることを試みている。「従来の手法に固執するだけでは、必然的に組織は衰退する。職人の数は減り続けているが、我々は売り上げを維持し、現場を守り抜く必要がある」と語る言葉には並々ならぬ覚悟が滲んでいる。


2030年に向けてのロードマップを、広瀬社長は「売上高40億円・売上利益率10%の達成」と描いている。現場の最前線を歩んできたからこそ、職人の苦労も技術が進化する喜びも熟知しており、「私の使命は、テクノロジーを駆使することで、高度人材を育て上げ、彼らが誇りを持って働ける環境を整えること」と改めて語る。見据える先には、「唯一無二の職人集団」としての確固たる地位を築くことが存在する。広瀬社長は「日本の建設業を支える」という飽くなき探求心を基軸に、今日も第一線で指揮を執っている。

この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本 雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。






