クラフトバンク総研

社長就任を機に、松本建設が現状打破を継続へ

更新日:2026/9/18

 松本建設(徳島県小松島市)の松本満理子氏は、父・英進氏の急逝した2023年に代表取締役に就任した経緯を持つ。突如回ってきたトップとしての重責。それまで取締役として公共工事や徳島県建設業協会の理事などは担ってきたが、経営面に携わる経験はなかったため、現在は組織の運営を手掛けながらも、様々な知識・技術の習得を試みている。

 松本社長は、「県内の建設会社には、女性社長は極めて少ない。それ故に参考にできる人がいないので、手探りの状況で物事を進めている感覚が強い」と本音を語る。周囲に同じ境遇で現状を打破した人がいない。孤独な状態は依然として続くが、「やる気のある社員が伸びてほしい」という従来からのスタンスを堅持する。社内では、資格取得に関する費用は全て会社が負担する体制を徹底しており、自身も社員時代にこの制度を活用したことで、「一級土木管理技士など様々な資格を取ることができた」と振り返る。現在は、これまで会社として蓄積してきた知見を活かし、工事成績を向上させることに注力。近年では、落札状況が好調な形で推移しているが、80点以上を安定的に獲得できるよう、社内課題の改善を心掛けているようだ。

 元請けとして事業を展開する松本建設では、15人の職人を抱えることから分かる通り、一定以上を自社で施工できる仕組みを採用している。先代からの信念に基づくものだが、松本社長もこれを継承。「災害が発生した場合、即座に救助へ迎える部隊を整備しなければ、地域に住む方々の尊い命を失う危険性がある」と力を込める。自社で担当する施工を全て他社に任せるという発想は一切ない。松本社長は「自分の目の届く範囲でないと不安なだけ」と謙遜するが、万が一の緊急事態を常に想定しているという、地域社会との共生が前提にある象徴的なエピソードである。

 今後の目標を聞くと、松本社長は「当面は現在の状態を保つことに集中している」と答える。「もちろん営利企業である以上、成長が必須という現実は理解している。しかし、冷静かつ客観的に現状を分析すると、発展を目指す前に現状維持の積み重ねに注力しなければ、全ての土台が崩れてしまうという思いが強い」とも考えを示す。目まぐるしい変化が続く中でも、社員はよくやってくれている。「トップが男性か女性か。この現実は埋められないと痛感するケースは多い。しかし、自分では変えられない状況を嘆くのでなく、変えることが出来る世界に着目して現状打破を続けていきたい」と展望を述べ、先に備える姿勢を示している。

関連記事:建魂一適「徳島県建設業協会・青年部」

新着記事

  • 2026.11.02

    本州最北の地からの挑戦を継続 熊谷建設工業

     「この街を次の世代に残さなければならない」  熊谷建設工業(青森県むつ市)を率いる熊谷圭之輔社長の切実な危機感である。会社は本州最北の下北地域で、80年以上も地域のインフラを支え続けてきた。道路整備や冬の除雪を担う建設 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.10.30

    事業承継に向けた準備に入る セカンドライフ

     セカンドライフ(さいたま市岩槻区)の子安克枝氏社長は、企業永続を見据えた事業承継を進めていく方針を固めた。次期社長に指名した人物は荒田晃次工事部長。2002年に会社を設立する以前から、長く二人三脚で動いてきた信頼関係を […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2026.10.27

    100年続く技術・可能性の伝承を目指す 竹田工務店

     35歳で先代から会社を承継した当時を、竹田工務店(京都市南区)の竹田俊介社長は「建設業界の高齢化が進む中、同世代の仲間が壊滅的に少なく、将来に言いようのない不安を抱いた」と振り返る。 京都の地で100年以上に渡り伝統建 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.10.23

    シンコーワが人材重視の組織づくりを始める

     「家業に戻るという選択肢は特になかった」   シンコーワ(名古屋市中村区)の古市治希社長が、学生時代から抱いていた本音である。創業者であり現会長の父・光明氏から、家業の話は殆ど聞いたことがない。その後、新卒では別の会社 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一