シンコーワが人材重視の組織づくりを始める
更新日:2026/10/23
「家業に戻るという選択肢は特になかった」
シンコーワ(名古屋市中村区)の古市治希社長が、学生時代から抱いていた本音である。創業者であり現会長の父・光明氏から、家業の話は殆ど聞いたことがない。その後、新卒では別の会社に従事していたが、営業先で様々な人から「シンコーワに入らないの?」と声掛けされる機会が増えたこと。また、自社が地域にとって不可欠な存在であることを再認識できたことが「大きな転機になった」と振り返る。前職での不満は一切なかった。しかし、当時の上司に家業に戻ることを相談した際に、快く背中を押されたことが、「新たな道に進もうという意志を決定付けた」と目を輝かせながら語る。

入社後、しばらくして業務改善に着手。「長時間労働が常態化しており、今のやり方の継続では、いずれ会社は立ち行かなくなると痛感した。現場は懸命に動き続けられる社風だからこそ、仕組みによって社員をサポートすることは私自身の使命だと考えた」。協力を求めたのは、同じ志を共有できていた伊藤允一室長。二人三脚の改革により、段階的に全社にチャットワーク・クラウドツールなどのDXサービスを導入。デジタル化を加速化できたことで、帰社後の事務作業は大幅に減り、繁忙期でも生産性・効率性の良い体制を実現した。「社員も感じていた『日々の不満』を、どうしても解消したかった。『現場の声』に地道に向き合い続けたことで、確かな生産性の向上に結びつけられた」と話す表情は晴れやかである。


直近において注力する分野を、古市社長は「人『財』の育成と採用」と表明する。「挨拶や礼儀などを前提とした、人間力が存在するからこそ技術力が活きる」という信念を基に、「人間力=感謝力」と定義した心の成長を最優先する教育を実践する。10年以上も継続している新卒採用では、学生の両親も入社前に必ず会社へお越しいただく。創業の精神を伝える動画や使命、仕事の厳しさを包み隠さず共有することで、真の意味で双方が納得した上での入社を果たしている。堅実な採用と育成は劇的な定着率の改善に繋がり、古市社長が入社時は50人程度だった社員数は、現在80人以上に拡大。「強固な組織基盤は地道な人集めにあり」というセオリーを見事に体現した形を見せている。


代表就任から間もなく2年。古市社長は「発注者様と同じ目線に立って問題・課題をともに解決する、ソリューション提供企業に進化させたい。『あなただから任せたい』と、人で選ばれる企業を目指す」と並々ならぬ意欲を見せる。その進化を後押しするのが、傘下に13社・グループ全体で330人規模を擁する「SKWホールディングス」である。各地域に根ざした建設会社等と提携・グループ化を進め、単体企業にとどまらない強固なバックボーンとして相互補完できる体制を確立。グループとしての総合力を活かした挑戦を広げる。交通社会インフラ事業は人々の命と街の安全を守る上で欠かせないものであり、「人」を中心とした経営を追求するシンコーワは「快適な交通社会づくり、まちづくり」実現に向けて取り組んでいる。経営理念「ともに力を合わせて、ともに成長し、ともに幸せになる」を念頭に、「ともに=チームワーク」と定義する30代の若きリーダーが描く未来に期待は高まるばかりだ。


この記事を書いた人
クラフトバンク総研 記者 松本 雄一
新卒で建通新聞社に入社し、沼津支局に7年間勤務。
在籍時は各自治体や建設関連団体、地場ゼネコンなどを担当し、多くのインタビュー取材を実施。
その後、教育ベンチャーや自動車業界のメディアで広告営業・記者を経験。
2025年にクラフトバンクに参画し、記者として全国の建設会社を取材する。








