岡本直也さん(有限会社曳家岡本・親方)
更新日:2026/10/28
来年3月を目処に国内でも数少ない「曳家職人」を引退することを決めた。現場に入って48年。受注するため安価に応じ、施工品質が低下する事態に陥るのを避け続けたこと。また、コロナ禍で依頼が激減したことなどもあったので「正確に言えば約30年くらいになるのでは?」と苦笑する。東日本大震災を契機に高知県から上京。全国を旅してきたが、「年齢を重ねるにつれて過酷な環境下での業務に、心身が疲弊したことを考えた上での決断だった」と経緯を語る。


最も印象に残っている案件を「甲浦八幡宮」と即答する。県の無形文化財にも指定される構造物に掛かる加重を逃がし、各箇所のゆがみを直しながら、何度も補正を繰り返し完成させた工程には四苦八苦したが、「全てを終えた後の充実感には、何物にも代えられない感動があった」と当時を感慨深く振り返る。


引退を撤回する可能性は現時点では皆無である。しかし、「手配やサポート面など、何らかの形で今まで培った知見を継承できたら良いな」との本音も漏れる。担当物件では、常に100%の力を発揮できるよう努め続けてきた誇りがあり、将来を担う職人に対しては「生きる上で最も多くの時間を費やすのが『仕事』。この現実と真摯に向き合い、常に技術の向上を突き詰めるスタンスを継続すべき」との提言も残す。「全力で取り組み続けた曳家職人としての日々は、本当に有意義なものだった」と心の底から話す姿は勇ましく、今後どのような分野で新たなポジションを見出すか注目である。


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この記事を書いた人
クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。







