クラフトバンク総研

フィット筋工法技術研究会

更新日:2025/9/9

【フィット筋工法技術研究会を設立】

2022年7月にフィット筋工法技術研究会が創設された。同工法は、鉄筋・ロックボルトなどの補強材を地山に多数挿入することで、斜面全体の安定性を高めることができる独自技術。地山に打ち込まれた高強度浸食防止マットの表面からは、斜面の強度を保ちながらも緑が芽生え、設置箇所からの緑化も実現する。野原広猛会長(トラスト工業・代表取締役)が、「世界自然遺産にも登録されている、沖縄県北部のやんばる3村の自然を守りたい」との思いで開発を始め、10年ほど前には特許も取得。自身が社長を務めるトラスト工業では、長年活用を続けてきた愛着のある工法である。研究会を設立した経緯を「同郷・同年代である資材メーカーの担当者から、『この技術は全国展開すべき』と後押しされたこと」と振り返る。団体を作れば、より広い範囲で地山補強・法面保護を実施し、美しい環境・景観も維持できるようになる。野原社長の中に、この有意義な提案を断る理由は皆無だった。

【鍵となるフックホルダー】

フィット筋工法は、トラスト工業が南城技術開発(那覇市)と共同で研究・開発して構築した技術であり、沖縄県優良県産品であるフックホルダー(溶融亜鉛メッキ加工)を活用している。フックホルダーは、表面を被覆するマットと打ち込んだロックボルトを連結する重要な役割を果たしており、地山全体の安定性を向上させる鍵となる。重機も入り込めない急斜面の箇所でも人力のみで行える施工には、高強度浸食防止マット、横枠、押え鉄筋、直打ち鉄筋挿入など、様々な状況に対応できる手法を用意。法枠工の横枠に当たり、高強度浸食防止マットが地盤に密着するように押える方式や、穿孔・グラウトの注入を必要とせず、地盤に直接鉄筋の挿入を可能にするなど、現場に応じた対策が取れることも特徴である。

【NETIS登録を目指す】

研究会の発足から2年強が経過し、現在の正会員数は16社・賛助会員は6社となっている。沖縄で導入が開始されたフィット筋工法の活用エリアは、九州全域を経て今では奈良や和歌山、三重、愛媛などに広がりを見せている。この状況を野原会長は「公共工事の案件でも順調に採用される現状を基本的には嬉しく思う。ただ国交省規模の案件になると、やはり担当者から「NETIS(国土交通省の新技術情報提供システム)に登録があれば、物事はスムーズに進むはずですが…』と返答されることが増えてきた。更なる普及促進を見据えると、NETIS登録に向けた展開を想定する必要がある」と本音を述べる。信頼を寄せるコンサル企業から「NETIS取得も大事ですが、工法の根拠・実証・実績を固めなければ、いずれ行き詰まる可能性もある」との指摘を受けたこともあり、2025年からは大学との共同研究を進める方針を決定。

【知見総動員で拡大を図る】

フィット筋工法技術研究会の広報責任者には、野原猛竜氏(以下・猛竜氏)が就任している。大学卒業後、関西での営業体験を経て研究会とトラスト工業に参画を果たした。ゼロから会社と研究会を立ち上げ、独創的な発想で突き進む野原会長を見て、「どれだけ勉強しても会長には追い付けない。ただ、これまで蓄積した知見を総動員してフィット筋工法の拡大に携われれば、肩を並べられる存在には辿り着けるかもしれない」と特別な使命感を持って事業を進められているという。日に日に研究会の動きが活発化する中、大企業で役職の付いた人々と折衝することも増え、プレッシャーを感じるケースも多い。しかし、貴重な場数をこなし続けてきたことで、自身の飛躍的な成長も体感しているようで、「この重責を使命と捉え、現実と向き合いながら業務を進めていきたい」と並々ならぬ意気込みを見せている。

【全国展開も視野に入れた活動を】

野原広猛会長と猛竜氏は、「近年までは沖縄県内の需要が大半だったが、今年からは文字通り全国展開を視野に入れた活動の検討に入る」と方針を示す。現状では温暖な西部地域での施工が圧倒的に多く、東北エリアでの浸透を目指すには、ロックボルトや鉄筋が雪の影響で伸縮しないよう工夫を凝らす必要性が出ている。現段階では、現地で定着している工法とフィット筋工法を掛け合わせる方式を見込んでいるようで、最適解を探求するための悩みが尽きない状況が続く。「自然と共存し、美しい景観を守るため」と銘打ったフィット筋工法は現在、予防治山や法面修復、災害復旧工事など、様々な状況下で実績を積み重ねている。「土砂災害の防止」と「自然との共生」の双方を叶えるため、試行錯誤を重ねた軌跡は、今なお多様化するニーズに応えるために進化を続けている。

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