クラフトバンク総研

組織基盤の安定化に向け、鈴木建業が挑戦を加速

更新日:2025/9/29

今年7月に鈴木建業(福島県白河市)が創立30周年を迎えた。鈴木時次社長は、「先代から事業を継いで15年。振り返れば一瞬の出来事だったと感じている」と感慨深げに語る。東日本大震災直後、単価が低迷する厳しい市場環境での就任だったが、果敢に事業拡大に踏み切り、当時約2億円だった売り上げを、現在では約9倍に伸ばした実績を持つ。鈴木社長は「優れた人材に恵まれたことが大きい」と謙虚に語るが、その裏には仙台営業所は専務である実弟の保氏を信じ切る形で統括を任せ、組織づくりと人材育成を徹底してきた揺るぎない戦略があったようだ。

鈴木社長が重視するのは、「持続的に成長できる組織基盤の整備」である。引退はまだ先を予定しているが、「将来的な事業継承も見据え、自分が不在でも機能する組織を作り上げたい」と信念を持つ。役員昇格までには明確なステップを設け、意欲ある社員に機会を与える仕組みの構築を目指している。数年前からは、元請けからアドバイスを参考に、安全衛生に関する月例勉強会を開始。現場での安全対策や作業効率の改善に繋がる知識共有の場として、若手からベテランまでが活発に意見を交わせる機会を用意した。回を重ねるごとに「自分の現場でも取り入れたい」と声を上げる社員が増えていき、「顕著な変化ではないが、確かな手応えと結束の強まりを感じている」と前向きな変化を生み出すことにも成功。2016年には「職場外で交流する選択肢も作ろう」と、社員・知人で野球チームを結成。創部3年で全国大会に出場するほどの実力を発揮しており、これらの活動をSNSで発信することで、社内の関係強化・実績向上にも活かしているという。

鈴木社長は「売り上げ拡大も視野に入れるが、当面は現状の安定維持を優先する」と冷静な姿勢を見せる。「ここまで信頼できる仲間に支えられて歩んできた。今後も地域に根差し、確かな技術・誠実な姿勢で業務に取り組み続ける」と決意を語る。今春には外国人社員が技能士資格を取得し、東北初の快挙を成し遂げた。高い専門性と挑戦を尊ぶ企業風土ならではの成功事例も増えてきた。節目の年を迎えた鈴木建業は、確固たる基盤を胸に未来への歩みを加速させている。

新着記事

  • 2026.05.26

    DX駆使による高度人材の育成に集中へ 東京朝日ビルド

     「正直戸惑いの方が大きかったが、この経験を糧にすると腹を括ったんだ」 東京朝日ビルド(埼玉県草加市)の広瀬慎吾社長は、微笑みを浮かべながら親会社・竹中工務店から辞令を受けた当時を振り返る。入社以来、現場の最前線を一貫し […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.22

    沖縄営業所の開設を機に、栄港建設が可能性を探求へ

    オーダーメイド建築を手掛ける栄港建設(横浜市港北区)が、今年3月に沖縄営業所を開設した。1982年の創業以来、本社一拠点体制を貫いてきた同社にとって、初の県外進出となる。岡田雅人社長は「沖縄進出は確かな戦略に基づいた一手 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.19

    防災設備が唯一無二の存在へ。矢野防災設備が掲げる地域主体の経営

    矢野防災設備(三重県四日市市)の矢野陽一社長は、「地域社会への奉仕と誠実な事業展開」を理念に掲げ、力強く組織を牽引する。祖父・政男氏が1959年に創業した同社は、消防設備の設計・施工・販売などを専門的に手掛けている。長年 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.15

    創業100周年を見据え、中林建設が組織転換

    中林建設(静岡県三島市)では、トップダウンからボトムアップ型への組織転換に取り組んでいる。佐野竜司社長は、「社員の声を吸い上げ、一人ひとりが自律的に動ける組織を目指したい」と思いを語る。自身は家業で現場監督として経験を踏 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一