クラフトバンク総研

新体制のカナツ技建工業が、利益重視で新境地に挑む

更新日:2025/6/2

2024年8月、カナツ技建工業(島根県松江市)の社長に金津式彦氏が就任した。法人設立70周年のタイミングで責任あるバトンを引き継いだことに、「外部からの見られ方に変化は感じるが、専務・副社長時代から中長期計画の策定に携わるなど、近年では社内の改革を指揮していた。先行きの不透明な状況は続くが、引き続き柔軟な組織運営を心掛けたい」と意気込みを見せる。金津社長自身は35歳までアパレル関係の仕事に就いていたが、父であり現在は会長を務める金津任紀氏に呼び戻される形で、同社に入社を果たした経緯を持つ。

建設業界に入職を果たした金津社長だったが、「実は内心では『興味が持てなければアパレルに戻ろうかな』とも考えながら参画した」と微笑みながら打ち明ける。入社当初、法面工事の現場作業に従事し、生まれて初めての肉体労働に疲労困憊な日々を送っていた。しかし、日が経つにつれて、自身の関わった構造物が後世にも残ること。また、整備したインフラが地域の人々の安全・安心に役立つ現実を理解すると、「スケールの大きい建設業界の奥深さに魅了されていた」と率直に語る。その後、土木・建築だけでなく、営業から総務など幅広く経験を積めたことにより、「建設業の可能性を再確認できた」と現在の経営信条に通じる基軸を確立したという。

社長就任時から、社内に周知してきた事柄は「社員全員が利益意識を持つように変わること」。先代は「日頃から口酸っぱく『利益重視』を明言すると、安全面が疎かになる危険性がある」という考えが強かったが、金津社長は「利益に執着しなければ、賃上げを実施できず、成長投資も手掛けられない現実と向き合うべき」との確固たる意志を堅持。現状をシビアに見つめ直し、社員の利益意識を高めて様々な取り組みを行えたことで、実際に利益が大きく向上し、2年連続で大幅な賃上げを実現した。実際に給与が上がり始めると、更なる改善・改良を見せるという好循環を見せ始めているようだ。この良い影響は現場にも波及しており、2023・2024年度には、国土交通省がデジタル技術で建設生産プロセスの高度化などに取り組んだ企業を表彰する「インフラDX大賞」を受賞するなど、破竹の勢いを見せている。

常に「成長・発展・拡大」に重点を置く金津社長だが、「現状維持だけでは、10~20後には必ず行き詰まる」と、新たな活路も模索する。現状では、県外需要の拡張や再生可能な脱炭素への転換を図るGXの着手などを挙げており、既存事業のボリュームが下がることを見据えた上で経営計画を策定している。今年度からは、社内体制も経営人材が育つと言われる事業部制に移行するなど、既に次の世代にバトンを渡す想定も開始。多くの挑戦の核には「技術サービスによる価値の創造」が存在しており、複雑化し続ける社会・顧客の課題解決に最善を尽くす。「ステークホルダーに感動と笑顔を提供すると同時に、社会に有用な人財を育て、未来を切り拓く」。盤石な体制構築に向けて動き出したカナツ技建工業から、新たな展開が生み出される可能性は極めて高い。

関連記事:業界リーダーに迫る 『前例なきカイゼンに向けた進言。カナツ技建工業が業界の慣習打破に挑戦』

新着記事

  • 2026.05.26

    DX駆使による高度人材の育成に集中へ 東京朝日ビルド

     「正直戸惑いの方が大きかったが、この経験を糧にすると腹を括ったんだ」 東京朝日ビルド(埼玉県草加市)の広瀬慎吾社長は、微笑みを浮かべながら親会社・竹中工務店から辞令を受けた当時を振り返る。入社以来、現場の最前線を一貫し […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.22

    沖縄営業所の開設を機に、栄港建設が可能性を探求へ

    オーダーメイド建築を手掛ける栄港建設(横浜市港北区)が、今年3月に沖縄営業所を開設した。1982年の創業以来、本社一拠点体制を貫いてきた同社にとって、初の県外進出となる。岡田雅人社長は「沖縄進出は確かな戦略に基づいた一手 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.19

    防災設備が唯一無二の存在へ。矢野防災設備が掲げる地域主体の経営

    矢野防災設備(三重県四日市市)の矢野陽一社長は、「地域社会への奉仕と誠実な事業展開」を理念に掲げ、力強く組織を牽引する。祖父・政男氏が1959年に創業した同社は、消防設備の設計・施工・販売などを専門的に手掛けている。長年 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一
  • 2026.05.15

    創業100周年を見据え、中林建設が組織転換

    中林建設(静岡県三島市)では、トップダウンからボトムアップ型への組織転換に取り組んでいる。佐野竜司社長は、「社員の声を吸い上げ、一人ひとりが自律的に動ける組織を目指したい」と思いを語る。自身は家業で現場監督として経験を踏 […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一