クラフトバンク総研

小俣組が「自慢の社員たち」と可能性の探求

更新日:2026/4/10

建設と介護事業を手掛ける小俣組(横浜市南区)が、2029年に本社移転の計画を進めていることを発表した。建設地は現在の本社周辺を想定しており、自社設計・施工による7階建ての免震構造の採用を検討。最大250人を収容可能な広大なフロアを確保し、有事には地域住民の避難場所としての活用も予定している。設計を自社の社員に任せられた現実を、小俣順一社長は「自慢の社員たちが、最高の設計に仕上げてくることを期待している」と喜びを表している。

※設計段階のため変更の可能性あり

小俣氏は、創業100周年の節目である2022年に4代目の社長に就いた。当初から直面していた課題は若手社員の定着率。「採用数は安定していたが、それは横浜という好立地に支えられていた側面も大きかった」と率直に話す。「今は何よりも定着に目を向けるべき」と分析。これまで次世代を担う人材育成を主軸に組織改革を進めてきた。その中でも印象的な取り組みの1つが、小俣社長の主導による若手社員向けの研修だ。3ヶ月に一度の頻度で、各現場に散らばる若手を本社に呼び戻し、横の繋がりを再構築することで心の距離を縮める取り組みである。この地道な伴走が功を奏し、新卒社員の定着率は劇的に改善。「同期や年次の近い仲間同士で支え合う風土の構築が、強固な基盤の醸成に繋がると再確認できた」と実体験を述べる。

小俣組は、地域貢献活動でも独自の工夫を凝らしている。近隣の小学校と、学校の廃材を活用した家具製作や、校内のデッドスペースを「秘密基地」のようなカフェとして再生させる遊び心溢れる事業を展開。子供たちから出た設計から解体、施工に至るまでのアイデアを尊重し、プロの技術で形にするプロセスを重視する。この試みは単なる体験に留まらず、思わぬ副次的な効果を生んでいるようだ。児童たちは自身の理想を具現化するため、図面作成に必要な面積の計算という壁に直面。教科書での知識が「生きた技術」へと変わる瞬間、自主的に算数を学び始める児童が続出。ゼロから空間を創り上げる成功体験は、子供たちの自信を育む貴重な機会としても機能している。

中長期的な会社としての役割について、小俣社長は「単にハードをつくる『ものづくり』という枠を超え、新たな体験や価値を創造する『コトづくり』を提供できる企業に進化させたい」と力強く明言する。その具体的施策として、2026年4月には現場のICT活用を専門的にサポートする「IT戦略室」を新設。最新技術を武器に、若手がより創造的に働ける環境を整える構想を掲げている。人財の多様化を象徴する試みとしては、現場監督から施工までを女性のみで担えるチームに作りも視野に入れている。取材中、小俣社長の口からは何度も「自慢の社員たち」という言葉が出ていた。誇りに感じている社員たちと、建設業の枠を超えた新たな可能性をどのように生み出すのか。筆者はその途中経過にこそ価値があると着目し、今後の行く末を見守りたい。

新着記事

  • 2026.04.08

    「闘魂一途」を胸に、萩原建設工業が未来を切り拓く

    萩原建設工業(北海道帯広市)の萩原一宏副社長は、「社員らの幸福とやりがいを追求しながら地域に貢献すること」を至上命題に掲げている。社是である「闘魂一途」を自身に強く言い聞かせながら、約180人の社員と共に理想の職場を実現 […]
    クラフトバンク総研記者信夫 惇
  • 2026.04.07

    DXで社内変革を果たした礒部組が、「地域」重視の施策で躍進を図る

    礒部組(高知県安芸郡)が、今年7月に創立70周年を迎える。祖父が安芸郡中芸地区に根差した建設業者として創業した同社。災害復旧工事を始め、道路や河川、森林など様々な分野の土木工事で地元の安全を・安心を支えている。礒部英俊氏 […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2026.04.03

    DX駆使と若手の力を強みに、近藤建設が未来に向けた経営に踏み出す

    近藤建設(富山市)は、2024年4月に「KONDO-DX事業部門会」を立ち上げた。同部門会は、各部署からDXに関心の高そうな社員を選出しチームを組成。活動の初めに全社員からDXで改善したいことや、実現を見込めそうな内容を […]
    クラフトバンク総研編集長佐藤 和彦
  • 2026.04.02

    沖電工が「環境に最も優しい総合建設業」を推進

    沖電工(那覇市)は2025年4月、子会社である沖設備を吸収合併した。1年ほど前から着々と準備を進めてきた吸収合併。綿密な意思疎通やスムーズな業務推進が功を奏し、沖設備だけでは受注が難しかった大型案件にも取り掛かれる体制を […]
    クラフトバンク総研記者松本 雄一