若返りを進める田中建興が、新時代の会社創りに挑戦へ
更新日:2025/5/2
公共工事などを手掛ける田中建興(大阪府八尾市)が、今年12月に法人化40周年を迎える。現・相談役の田中秀氏が創業以来、会社は様々な変遷を辿ってきたが、2019年に孫の蘇大輝氏が2代目社長に就任。社員の平均年齢が39歳に若返りを見せるなど、事業承継を順調に進めている。

蘇社長が最初に取り組んだ改革は、定期的に新卒社員を採用すること。「10~20年先を見据えて共に歩むことを考えると、未経験の新卒をゼロから育て上げる仕組みを構築することが、企業永続への第一歩と考えた」と経緯を語る。入社後は、月に1度の新入社員研修会を実施しており、入社前とのギャップや現在抱えている悩み、この先目指すべき理想像など、個別にコミュニケーションを取る機会を確保。新入社員からは「社歴の近い先輩から丁寧にフォローして貰えるので、悩みも打ち明けやすく仕事がやりやすい」との声が上がっている。どのような社員の採用を心掛けているのかを聞くと、蘇社長は「明朗快活な体育会系出身者」と即答。「様々な試みを実施してきたが、学生時代に身体を酷使しながら1つの物事に邁進した経験のある社員は、入社後もチームとしての動きも理解し、周囲に良い影響を与えるケースが多かったから」と理由を語る。週休2日制の徹底や有休消化を推奨し始めた要因も「若手がより生き生きと働ける場を整備するため」と話す通り、常に社内環境の改善・改良に全力を尽くす姿勢も印象的だ。

現在は、直接鋼管を削進するベビーモール工法を、若手に継承していくことに注力。「特殊技能のためマスターするまで時間を要するが、ベビーモール工法は当社の根幹に関わる技術。この部分は遠回りになっても、着実な伝承を手掛けていきたい」と先を見据える。田中建興では、下水道施設の工事や鉄蓋の維持修繕作業など、一長一短では身に付かない技術が必要なことが多い。技術指導は時間がかかり、骨の折れる作業になるが「当社の業務には、地域のインフラを守るという重要な使命がある。安全・安心を提供するための正確な技術習得の過程に、不備は許されないので、ここは徹底していく」と気を引き締める。最近では、リフォーム工事や建物診断なども積極的に推進しており、蘇社長が就任以降、会社としての可能性を拡げ続けていることも特徴である。

「今後も新卒採用を続けることで、会社の若返りを図っていく。現在、当社には経験豊富なベテランが多く在籍しており、若手社員が丁寧な教育を受け、その内容を新入社員に伝えるという良いスパイラルが出来上がりつつある。お客さまから『田中建興に頼んで良かった』というお声を1件でも多く頂けるよう、これからも新時代にふさわしい会社創りに全力を尽くしていきたい」と展望を述べた。田中建興の経営理念は、「誰よりも汗をかき、確かな技術で地域の暮らしを支える」。田中建興の躍進は、「建設業界の在り方」の変革に繋がっていくはずだ。

この記事を書いた人

クラフトバンク総研 編集長 佐藤 和彦
大学在学時よりフリーライターとして活動し、経済誌や建設・不動産の専門新聞社などに勤務。ゼネコンや一級建築士事務所、商社、建設ベンチャー、スタートアップ、不動産テックなど、累計1700社以上の取材経験を持つ。
2022年よりクラフトバンクに参画し、クラフトバンク総研の編集長に就任。企画立案や取材執筆、編集などを担当。現在は全国の建設会社の取材記事を担当。